EDIとは?種類や仕組み、メリット・デメリット、Web EDIについて解説

 2024.09.17  株式会社DGコマース

EDIとは?種類や仕組み、メリット・デメリット、Web EDIについて解説

御社では、受注業務のデジタル化・効率化はどの程度進んでいますか?
FAXなどで入ってくるアナログな注文書を手作業でシステムに入力している企業はまだまだ多いのが現状です。こうした手間のかかる作業を効率化し、生産性を向上させるために役立つのが、EDI(電子データ交換)です。

EDIを導入することで、受注・発注に伴う煩雑な処理をデジタル化し、作業負荷を軽減できます。しかし、デジタル化の流れはここで止まりません。近年、BtoB EC市場も急速に拡大しており、取引先との営業活動を一貫してデジタル化するためには、EDIとBtoB ECの両方を活用することで、さらに効率的な業務運営が期待できるでしょう

本記事では、EDIがどのように受注業務を効率化するか、さらに営業活動の効率化の観点で、BtoB ECはどうあるべきなのかを解説していきます。

EDIとは

EDIとは?

EDI(Electronic Data Interchange)とは、「電子データ交換」を意味し、企業間で業務書類をデジタルデータとしてやり取りする仕組みです。従来、契約書や受発注書、納品書、請求書などはメールやFAX、郵送でのやり取りが一般的でしたが、EDIを導入することで、これらを専用回線やインターネットを通じてデータ化し、スムーズに交換することができます。

こうしたデータのデジタル交換は、手作業での処理に比べてミスが減り、業務効率が大幅に向上します。また、煩雑な業務プロセスを削減することで、コストの削減や管理業務の効率化も実現できます。

EDIの導入は、自社の業務効率化にとどまらず、取引先企業にも多くのメリットをもたらします。そのため、販売業務や物流業務など、幅広い業界で広く活用されているのです。

EDIのメリット

EDIは長年にわたり、多くの企業に導入されており、現在も利用が拡大し続けています。
ここでは、EDIを活用することで得られる主なメリットについて解説します。

 ペーパーレス化の推進

企業間取引では膨大な量の業務書類がやり取りされており、紙ベースで取引を行っている場合、その紙代や印刷代、郵送代が大きな負担となります。EDIを導入することで、これらの業務書類をデータ化し、ペーパーレス化を実現することができます。結果として、紙の使用量と関連コストを大幅に削減でき、より効率的な運用が可能になります。

近年、コスト削減や業務効率化、テレワーク推進、環境保護の観点から、社会全体でペーパーレス化が進んでいます。特に、2022年の改正電子帳簿保存法により、企業が書類を電子保存する義務が強化されました。EDIを導入することで、紙の帳票を出力する必要がなくなり、電子保存への対応が容易になります。

EDI導入による業務書類のデータ化は、コスト削減だけでなく、環境への配慮や持続可能なビジネス運営の観点からも重要な取り組みといえます。

業務の効率化

従来の紙による企業間取引では、業務書類の作成や送付、確認といった煩雑な手続きに多くの時間と労力がかかっていました。

EDIを利用すれば、これらの工程をデジタル化し、データの入力から取引に至るまでの全プロセスが自動化されます。また、EDIは、一度登録されたデータを他の業務書類にも活用できるため、手間と時間の大幅な削減になります。

データによる処理・取引により業務効率を劇的に改善できることは、EDIを導入・利用する最大のメリットと言えます。

ミス・トラブルの防止

紙ベースで業務を行っている場合、手作業によるミスやトラブルが発生しやすくなります。特に、複数の担当者が書類に関与する際には、記入ミスや見落とし、記入漏れなどが避けられません。しかし、EDIを導入すれば、業務書類の作成や管理がシステム上で行われるため、データの正確性が保たれ、ヒューマンエラーを最小限に抑えることができます

結果として、取引の信頼性が向上し、企業間取引におけるミスやトラブルの防止にもつながります。取引の透明性が高まることで、取引先との信頼関係も強化され、長期的なビジネスパートナーシップの構築にも貢献します。

EDIのデメリット

EDIは受発注業務の効率化に貢献しますが、すべての企業が導入しているわけではありません。EDI特有のデメリットや課題が存在するため、導入に慎重な企業も多いです。ここでは、EDIの代表的なデメリットを解説します。

システム導入が必要

EDIを利用するには、対応したシステムが必要です。EDIはデータ交換そのものを行う仕組みですが、発注データを作成したり、受注データを取り込むためには、これらに対応する社内システムを整える必要があります。既存のシステムがEDIに対応していない場合、新たなシステムを構築するためのコストや時間が発生することがあります。

さらに、導入後もシステムの保守・運用が必要であり、これらに伴うランニングコストやITリソースの確保が課題となることがあります。

 個別仕様のEDI対応が複雑

EDIには業界標準のフォーマットを利用する「標準EDI」と、企業ごとに独自のルールを設定する「個別EDI」があります。標準EDIが普及すればデータ交換がスムーズになりますが、現実には企業ごとの個別仕様が多く、取引先ごとにシステムを調整しなければならないケースが多々あります。これにより、導入の複雑さや運用負荷が増すことがあります。

また、企業ごとに異なる仕様に対応するための技術力やリソースが求められるため、特に中小企業にとっては大きな負担となる場合があります。

標準EDI、個別EDIについては後ほど詳しく解説します。

企業間の力関係に依存する

EDIの仕様が発注者側の企業に依存するケースが少なくありません。例えば、規模の大きい仕入先が個別EDIを導入している場合、そのシステムに合わせる必要があるため、自社の業務効率化が進まない場合があります。

EDIは本来、双方にメリットがある仕組みですが、実際には取引相手の影響を受けやすく、力関係によって業務効率化が片側だけに偏ってしまうというケースがあります。

中小企業にとって使いづらく、効率的ではない場合がある

中小企業の立場からすると、異なる仕様のさまざまなEDIに対応するのは大変で、システム導入や運用が負担となるケースが少なくありません。特に、取引先ごとに異なる個別EDIに対応する必要がある場合、技術的な対応力やリソースが不足している企業では、非効率に感じることがあります。

また、FAXで手書きの注文書を送るほうがシンプルで、作業が早いと感じる担当者もいるため、EDIの導入による効率化がすぐに実感できないこともあります。すべての中小企業がEDIに対して抵抗感を持っているわけではありませんが、手作業に慣れている企業にとっては、FAXの方が業務の観点で合理的に感じられるケースも少なくありません。

EDIの種類

EDIの種類

EDIは、通信に用いるデータ形式や識別コードといったルールによって、いくつかの種類に分けられます。EDIを効果的に活用するためには、各種類のEDIの特徴を理解することが重要です。

ここでは、現在活用されているEDIの主要な種類とその特徴を紹介します。

1. 個別EDI

個別EDIとは、取引先ごとに通信形式や識別コードなどのルールを個別に設定するタイプのEDIです。企業間で自由度の高いルールを設定できるという利点がありますが、その反面、取引先ごとに専用システムを用意しなければならないため、導入と運用が複雑になる傾向があります。

取引先が少ない場合には適していますが、取引先が多いとコストや対応の負荷が増えるため、中小企業にとっては大きな負担となることが多いです。また、発注者が優位となるケースが多く、取引条件が発注者に有利に決められる傾向があるため、下請企業には不利な状況が発生することもあります。

2. 標準EDI

標準EDIは、取引規約、フォーマット、データ形式、識別コードなどのルールが標準化されているEDIです。これにより、取引相手のシステムの仕様に依存することなくデータを交換でき、導入や運用の負担が軽減されます。

特に、同一規格の標準EDI同士であれば、システム調整が不要となり、データ処理がシンプルに行えるという大きなメリットがあります。代表的な標準EDIには、流通BMS(流通業界標準)、中小企業EDI(中小企業間の取引に特化)などがあり、特定の業界における標準化が進められています。

3. 業界VAN(標準EDI)

業界VANは、特定の業界仕様に合わせて標準化されたEDIであり、ネットワーク技術を活用して異なるシステム間での接続を可能にします。標準EDIの一種であり、業界全体で共通の商品コードや取引先コードが使用されるため、同じ業界内での取引が非常にスムーズに行えます。ただし、他業界との取引が難しくなることが課題として挙げられます。

代表的な業界VANには、酒類・加工食品業界のVAN「FINET(ファイネット)」菓子業界の「eお菓子ねっと」、日用品業界のPLANET(プラネット)、医薬品業界のJD-NET(ジェイディーネット)などがあり、これらはそれぞれの業界に特化したEDIの標準化を目指しています。

近年注目される「Web EDI」

最近では、従来のEDIに加え、インターネット回線を利用したWeb EDIが登場し、導入の手軽さから注目を集めています。Web EDIは、専用のシステムを構築する必要がなく、インターネットを介して手軽に取引をデジタル化できるため、新たにEDIを導入する企業にとって有力な選択肢となっています。

以下では、Web EDIの概要とそのメリット、そして導入時の注意点について解説します。

Web EDIとは?

Web EDI(Electronic Data Interchange)とは、従来のEDIが専用回線や電話回線を利用していたのに対し、インターネット回線を使用して取引データを交換する仕組みです。Web EDIにはブラウザを使用するタイプと、サーバーを介してファイルを転送するタイプの2種類がありますが、現在はクラウドベースのブラウザ型が主流です。

この仕組みは、電話回線の廃止やISDN回線のサービス終了といった背景を受け、急速に普及しつつあります。

Web EDIの導入メリット

1. 低コストでの導入・運用

Web EDIの多くはクラウドで提供されているため、専用システムの構築や保守、運用が不要です。従来のEDIよりも低コストで導入・運用が可能であることが大きなメリットです。

2. 導入のハードルが低い

クラウドベースで提供されるWeb EDIは、システム互換性の障壁が少ないため、導入にかかる時間や手間が少なく、非常に導入しやすいことが特徴です。

3. 高速なデータ通信

従来の電話回線や専用回線よりも、インターネット回線を使ったWeb EDIは遥かに高速でデータ通信が可能です。これにより、業務のスピードアップが期待でき、効率化にもつながります。

4. 柔軟なデータ送受信 

従来のEDIでは扱えなかった画像や漢字データの送受信も、Web EDIでは問題なく行うことができます。これにより、取引先とのコミュニケーションがスムーズに進むようになります。

Web EDIの課題

一方で、Web EDIには以下の課題もあります。

標準化が進んでいない

現状、Web EDIは従来のEDIと比べて標準化が進んでおらず、取引先ごとに異なるシステムや通信プロトコルに対応しなければならない場合があります。このため、導入に際しては取引先との仕様確認が必要です。

通信プロトコルの多様性

Web EDIでは、異なる通信プロトコルが存在するため、プロトコルの違いによっては取引先とのデータ交換がスムーズに行えない場合があります。複数のプロトコルに対応したサービスを選定することが、課題の解決に役立ちます。

BtoB ECとEDI

BtoB ECとEDI

EDIは電子データを使って発注・受注を行う仕組みですが、これも広義の電子商取引(EC)に含まれます。ここでは、BtoB ECとEDIの役割の違いや相互補完的な関係について解説します。

BtoB EC市場におけるEDI

ECと聞くと、BtoC(消費者向け)のオンラインショッピングをイメージしがちですが、BtoB(企業間取引)のEC市場も急速に拡大しており、EDIを通じての企業間取引はBtoB ECの一部を担っています。

経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によると、2022年のBtoB EC市場規模は約420兆2,354億円(前年比12.8%増)で、BtoC EC市場(約22.7兆円)と比較しても圧倒的な規模です。繊維、金属、化学製品など多くの取引がEDIを介して行われているなど、EDIは、企業間取引の効率化に重要な役割を果たしており、BtoB ECの成長に寄与する一つの要素として、依然として大きな影響力を持っています。

EDIとBtoB ECサイトの違い

EDIとBtoB ECサイトは、どちらも電子商取引の一部ですが、それぞれ異なる役割を果たしています。EDIは主に既存の取引先との定期的な受発注や請求処理を自動化・効率化するための手段として用いられます。これに対して、BtoB ECサイトは、新規顧客獲得や営業活動の効率化を目指し、製品情報の提供、見積もりの取得、発注・請求までのプロセスをオンラインで完結するためのツールです。

具体的には、BtoB ECサイトでは、商品の検索や詳細情報の提供、さらにはレコメンド機能による顧客への提案などが可能です。これにより、取引の初期段階から顧客とのやり取りをデジタル化できるため、より柔軟な商取引が可能になります。一方、EDIは既存の取引関係を前提に、受注から請求までの定型業務を効率化するのが得意です。

働き方改革の名のもとに、EDIによる受注業務の効率化はこれまで通り進んでいくと思われますが、今後、企業がさらなる効率化や成長を目指すためには、EDIの導入に加えて、BtoB ECサイトを活用することで、商取引全体をデジタル化し、営業活動の効率化や新規顧客の開拓を進めることが望ましいでしょう。特に、BtoB ECサイトは、取引の入り口から顧客との接点を持つため、顧客拡大や営業プロセスの向上に大きく寄与します。

EDIとBtoB ECの今後は?

今後、IoTの普及に伴い、企業間取引の自動化がさらに進むことが期待されています。例えば、複合機のトナー残量が少なくなった際に、自動で発注が行われるような仕組みや、精密機械に搭載されたセンサーが部品の劣化を検知し、自動的にメンテナンスや交換を通知するなど、機器が直接取引を行う未来が現実味を帯びています。

このような取引の進化により、従来のEDIやBtoB ECサイトの枠を超えた新たな自動発注の形が普及していくと考えられます。しかし、全ての取引が完全に自動化されるわけではなく、企業の購買プロセスには依然としてヒトによる意思決定や確認が必要な場面が存在します。そのため、Webサイトを通じた見積もり依頼やコミュニケーションは、今後も不可欠な要素となり続けるでしょう。

特に、デジタルネイティブ世代が発注権限を持つ企業が増加する中で、オンラインでのスムーズなコミュニケーションが求められるようになります。紙ベースの取引やメールでの添付ファイルによるやり取りは、利便性の観点から次第に淘汰されていくかもしれません。

今後、BtoB ECサイトを活用することで、企業は取引の初期段階から顧客との関係を築き、見積もり依頼から発注、さらにはアフターサービスに至るまでの一貫したデジタル体験を提供することが可能となります。EDIによる効率化に加え、BtoB ECサイトを活用した新たな顧客接点の創出は、企業にとって大きな競争優位を生み出す要素となるでしょう。

まとめ

EDIは、企業間取引の膨大なやり取りをデジタル化することで、紙の使用やコストの削減、業務効率の向上、ミスの低減といった多くのメリットを提供する仕組みです。特に、受発注プロセスの自動化とデータ管理の効率化により、多くの企業で広く活用されています。

近年では、クラウド技術の発展とインターネット環境の整備に伴い、導入のハードルが低いWeb EDIも従来のEDIを上回るメリットがあるとして注目を集めています。

また、高度なマーケティングが可能なBtoB ECに注目する企業も増えつつあります。EDIに加えてBtoB ECの導入を進めることで、取引の効率化のみならず、マーケティング機能の強化や新規顧客の開拓といった側面でも大きな成果を上げることができます。BtoB ECは、企業の競争力を強化するための有力な手段となり、これからの商取引において不可欠な要素になってくるのではないでしょうか。

EDIやBtoB ECによる企業間取引の業務効率化や信頼性向上を検討している方は、まずは知識的地盤を固めて、自社の状況に適した製品を選定することをおすすめします。

弊社では、BtoB ECを含むECビジネスに関するさまざまな資料を無料で提供していますので、ぜひご活用下さい。


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