ECパッケージとは?機能や比較ポイント、中~大規模EC向け6種を紹介

 2024.09.09  株式会社DGコマース

ECパッケージとは?

ECサイトの構築で利用される「ECパッケージ」とは、通販サイトやネットショップを迅速かつ効率的に立ち上げるために必要な決済機能や在庫管理機能など、主要なEC機能が一式揃ったECサイト構築ソフトウェアです。特に、年商1億を超える中~大規模のEC事業者のECサイト構築手法として、最も適していると言われているのがこのパッケージです。

ECパッケージの最大の強みは、自社独自のECサイトを構築できるものの、フルスクラッチ(ゼロからの開発)と異なり、基本的な機能が初期段階でECパッケージに組み込まれている点です。

これにより、初期コストを抑えつつ、自社の要件に応じて柔軟にカスタマイズすることが可能です。自社のブランドに合ったオリジナルのECサイトをスクラッチに比較して短期間で構築できるため、コスト効率開発スピードを両立できます。

しかしながら、一言でECパッケージといっても、多種多様なサービスが存在し、それぞれに特徴があります。数ある構築方法の中でパッケージが適しているとわかっても、そこから更に、事業規模や目標に応じて、どのパッケージが自社にふさわしいのか、必要な機能や予算に応じて選択する必要があります。特に、セキュリティの強化スケーラビリティを求める場合には、パッケージ選定が大きく影響します。

この記事では、ECパッケージ利用がおすすめの企業、主要ECパッケージの種類と特徴、比較や選定の際に押さえておくべきポイントを詳しく解説します。自社に最適なパッケージを選ぶためのガイドとして、ぜひ参考にしてください。

ECパッケージとは

ECパッケージとは、ECサイトの構築・運営に必要な機能が一式パッケージングされたシステム・ソフトウェアのことです。サーバーにECパッケージをインストールすることで、ゼロから開発する必要がなく、効率的にECサイトを構築できるのが特徴です。主な機能としては、決済システム在庫管理顧客管理など、EC運営に欠かせない要素が含まれています。

従来、ECパッケージはオンプレミス型(自社サーバーにインストール)で提供されるのが主流でしたが、近年ではクラウド型ECパッケージも急速に普及しています。

ECパッケージの導入により、ECサイト構築・開設のハードルが大きく下がることが特徴です。これにより、ECサイトの新規開設やリニューアルを検討している企業からの需要が増加しています。

また、ECサイトの構築方法にはいくつかの選択肢があります。それぞれの方法にはメリット・デメリットがあるため、企業の規模やニーズに応じた適切な選択が重要です。

ECパッケージに搭載されている主な機能

ECパッケージに搭載されている機能は、各製品により細かな違いがあるものの、ECサイトの構築・運営に必要な基本的な機能はどの製品にもほぼ網羅されています。ここでは、ECパッケージに含まれる代表的なフロント機能バックオフィス機能についてご紹介します。

フロント機能

  1. 商品検索機能
    顧客がECサイト内で目的の商品をスムーズに探せる検索機能は、購入率や顧客体験に直結する重要な機能です。フィルタリング機能やオートサジェスト機能を提供するパッケージも多く、これにより顧客の購買行動が効率化されます。

  2. 販促機能
    キャンペーンやクーポンの発行、ポイント付与、メルマガ配信機能など、ECサイトでのプロモーション活動を支援する機能です。顧客にアプローチし売上を最大化するための施策を効率的に実施できます。

  3. 会員機能
    顧客がアカウントを作成し、ログイン、購入履歴の確認、会員情報の更新ができる機能です。特定の会員グループに対してキャンペーンを行ったり、ポイント付与システムを連携させることもできます。

  4. ショッピングカート機能
    顧客が商品を購入するための基本機能で、カート、決済、配送方法の選択が含まれます。最近では、カートに入れた商品の保存やリマインダー機能、多様な決済手段(デジタルウォレットなど)に対応するパッケージが増えています。

バックオフィス機能

  1. 商品・在庫管理機能
    ECサイトで販売する商品の登録、カテゴリ設定、価格設定、在庫管理を行うための機能です。

  2. 受注管理機能
    ECサイトで購入した顧客からの注文情報(商品、数量、発送先、支払い方法など)を管理し、スムーズに出荷まで進めるための機能です。

  3. 顧客管理機能
    顧客の個人情報、注文履歴、会員ランク、ポイント保有数を管理する機能です。顧客分析を行い、マーケティング施策に活かすことも可能です。CRM(顧客関係管理)機能を統合しているパッケージでは、顧客の購買傾向に基づいたパーソナライズドオファーを実施できます。

  4. 分析・レポート機能

     ECサイト運営の改善に欠かせないデータ分析機能です。売上データや在庫状況、顧客の行動データをリアルタイムで分析し、レポートとして可視化します。この機能により、マーケティングや販売戦略の最適化が可能です。


ECパッケージを利用するメリット

ECパッケージは数多くの優れたサービスが提供されており、多くのEC事業者が採用しています。その理由は、ECパッケージが持つ、ECサイトの構築と運用における多数のメリットにあります。

ここでは、ECパッケージを利用する主なメリットについてご紹介します。ECパッケージの利用を検討している方は、判断材料としてぜひご参考ください。

1.短期間での導入が可能

ECパッケージは、過去の実績のあるECシステムを参考に、ECサイトに必要な性能・機能があらかじめ網羅的にパッケージされています。そのため、ゼロからの開発が不要です。これにより、開発工数や開発コストを大幅に削減でき、短期間でサイトの立ち上げが可能です。

フルスクラッチ開発の場合は、ECシステムの全機能を一から構築するために多大な時間と費用がかかりますが、ECパッケージではこの課題を解決し、スムーズにサイト構築を行えます。特に、迅速な市場参入が必要な企業にとっては大きな利点です。

2.カスタマイズが自由にできる

ECパッケージは標準で必要な機能が搭載されているだけでなく、自社に適した形で機能拡張を行うことを前提として開発されているため、カスタマイズ性が非常に高いことが特徴です。機能拡張や外部システムとの連携もスムーズに行え、必要に応じた独自の機能を実装できます。

ECサイトを手軽に構築できるプラットフォームにはASPやモール型ECがありますが、これらは基本的にカスタマイズの自由度が非常に低く、提供された機能の範囲内に制限されます。一方ECパッケージであれば、カスタマイズの自由度が高く、自社ブランドに合ったオリジナリティのあるECサイト構築できる点は大きな魅力です。また、企業の成長に合わせて、機能を追加したり、運用を拡張するなど、複雑な機能仕様も実現することが可能です。

自社が求める要望通りのECサイトを構築できることは、ECパッケージが持つ大きなメリットと言えるでしょう。

3.堅牢なセキュリティ

ECパッケージは、一定以上の規模を持つ企業を主な対象として設計・開発されているため、堅牢なシステムが組まれており高度なセキュリティ対策が施されています。

多くのサイバー攻撃はシステムの脆弱性やセキュリティホールを狙い撃ちされますが、ECパッケージはオープンソースのようにソースコードが開示されていないため、ターゲットになるリスクも低減されます。

多くの顧客情報や機密データを取り扱うECサイトにおいて、セキュリティの強度は非常に重要です。ECパッケージは、サイバー攻撃やデータ漏洩のリスクを最小限に抑えるため、定期的なセキュリティアップデート脆弱性への対策が行われており、信頼性が高いシステムが提供されます。

安心して運営をするためのシステムの信頼性・安全性が確保されているメリットは大きいと言えるでしょう。

4. マルチチャネル対応

近年のEC運営では、オムニチャネルマルチチャネル戦略が重要視されています。オンラインショップだけでなく、実店舗や他の販売チャネルとも連携できる機能を備えたECパッケージも多く、これにより統一された顧客体験を提供することが可能です。

ECパッケージを利用するデメリット

ECパッケージはECサイトの構築・運用に優れた有用性を発揮しますが、その一方でデメリットとなる部分も存在します。ここでは、ECパッケージの利用を検討する際に考慮すべき、主なデメリットについて解説します。

ECパッケージの利用を検討している方は、事前にデメリットの影響範囲・影響の大きさを把握しておきましょう。

1. 導入にコストがかかる

ECパッケージは、ASPよりも機能の充実度やカスタマイズ性に富んでいる反面、導入コストが高額であることがデメリットの一つです。

フルスクラッチよりは大幅にコストを抑えることはできますが、一般的に、標準パッケージの導入費用のみで500万〜1,000万円程度、カスタマイズも含めてベンダーに依頼すると2,000万円以上がおおよその相場となります。規模が大きくなるほど、また機能拡張やカスタマイズを行うほど、導入コストも高騰します。

ECサイトをスタートする初期投資が大きく、経営を圧迫することから、中小企業やスタートアップ企業にとっては負担が大きく、必然的に中規模以上の企業でないと導入が難しい点が大きなデメリットです。

2. システムの陳腐化が起きる

オンプレミス型のECパッケージは、数年経つとシステムが陳腐化し、時代の変化に対応できなくなるというリスクがあります。

一般的に、3〜5年が経過すると、機能面や性能面で最新の技術に追随できなくなり、セキュリティ面でもリスクが増大します。特にサイバー攻撃が高度化している昨今、セキュリティの更新が不十分だと、顧客情報の漏洩やシステムダウンといったリスクが高まります。

陳腐化を避けるためには、定期的なシステムのリニューアルや大規模なアップデートが必要となり、これには再び多額のコストと労力がかかりますが、ECパッケージを使い続ける限りは逃れられない宿命と言えるでしょう。

システムの陳腐化というデメリットを回避したい場合は、ECパッケージと同等の機能を有するクラウドECを利用することで、常に最新の技術やセキュリティ対策を取り入れたシステムを利用できるという選択肢も考えられます。

3. 運用の複雑化

ECパッケージは高度な機能を備えている一方で、運用面での複雑さがデメリットとなることがあります。特に、技術的な知識を持つスタッフが必要となり、ベンダーとのやり取りやカスタマイズ後のメンテナンスが頻繁に発生します。企業内に専任のIT担当者がいない場合、運用や管理が煩雑化し、外部ベンダーに依存せざるを得なくなるリスクもあります。

ECサイト構築パッケージの6つの比較ポイント

ECパッケージ6つの比較ポイント

ECパッケージには様々な種類があり、それぞれのシステムには特徴や利点があります。パッケージ選定においては、自社の運営方針や成長戦略に合ったものを選ぶことが極めて重要です。以下では、パッケージを選ぶ際に押さえておくべき6つの比較ポイントをご紹介します。

1.費用を比較する

ECパッケージには、無償でのダウンロードが可能であるオープンソースと、ECベンダーから有償で購入する有償パッケージがあります。オープンソースならばライセンス費用や利用料は基本的に発生しないため、導入コストを抑えることが可能ですが、使い勝手を向上させるためのカスタマイズやメンテナンスを自社で行う必要があり、その分のリソースや知識が求められます。

一方、有償のECパッケージでは、初期費用こそ掛かりますが、標準機能は備わっているので、必要な分だけカスタマイズを依頼すれば済みます。このカスタマイズには当然費用が発生します。ECパッケージを導入するにあたって、必要なライセンス費用やカスタマイズ費用といった初期費用だけでなく、ランニングコストはしっかりと確認しましょう。初期構築費用に問題がなくても、導入以降は月額費用が毎月掛かります。月額費用は固定費になりますので、売上のみならず成長率も見越した上で、負担が過剰にならないか判断しましょう。

ECシステムは基幹システム等と比べると、入れ替えのサイクルが早いシステムです。しかし、毎年毎年入れ替えられるほど気軽に入れ替えができるものではありません。自社に合わせるカスタマイズや自社内の他のシステムと連携させている場合は、影響が大きいためそう簡単に入れ替えることはできません。そのため初期費用だけでなく、想定利用期間でのトータルコストで比較検討することが重要です。

また、単に支払うコストだけでなく削減される内部コストにも目を向けるとよいかもしれません。例えばサーバなどはオンプレミスで、自社で構築した方が支払うコストは抑えることができますが、メンテナンスや保守を24時間体制で行うことを考えると、外部に委託した方が総コストは抑えることができます。

2.導入事例を比較する

自社に類似した業種や商材のECサイトに取り組んだ経験の有無を確認することも、選定時には重要なポイントになります。導入実績がすべてではありませんが、導入事例の豊富さは、少なくとも、パッケージの信頼性や実績を示す指標の一つとして評価することができます。

自社のECサイト要件に類似した導入実績や成功事例があれば、そのパッケージが自社に適している可能性が高まります。

特に、近しい業界での導入実績が多いベンダーは、その業界特有のニーズを理解しており、効率的な構築が期待できます。ECサイトの品質は、ECベンダーのノウハウに大きく左右されます。また、ECベンダーは過去に手掛けたECサイト構築の経験を参考にしながら開発を進めていくため、近しい業界の理解があれば効率的な開発工程を踏むことが可能になるでしょう。

導入事例は、単なる実績ではなく、ECベンダーのノウハウを示すものであり、プロジェクトを進める上で非常に重要な指標となります。導入実績を調査し、近しい業界での事例を確認することで、コストの削減も期待でき、スムーズに機能や要件の定義を進行していくことが可能となります。

また、独自の機能要件や、内容に応じて別途で開発費が発生することもるので、自社に近い導入事例があれば、その分安心できます。

3.担当者のスキルと対応力を比較する

窓口担当者が営業の場合、技術的な質問にすぐ回答できない場合は注意が必要です。自社に必要なのは自社のECビジネスを共に成長させるパートナーです。コミュニケーションは重要で、一緒にプロジェクトを進める上で気が合うかどうかは確かに大きなポイントです。

しかしそれは営業窓口に求めるというよりも、窓口となるエンジニアに求められるポイントです。一般的に職能として、営業であればコミュニケーション能力、エンジニアであれば技術力が求められますが、自社にマッチしたパートナーを探し出すときに、パートナーに求めることは、営業窓口の技術理解度とエンジニアのコミュニケーション能力なのかもしれません。

選定時に窓口となる営業とのコミュニケーションが選定結果に与える影響はとても大きいです。しかしプロジェクトの成功に最も大きな影響を与えるのは、担当するプロジェクトマネジャーです。パッケージの導入プロジェクトは、プロジェクトを統括するプロジェクトマネジャーのスキルと経験に大きく依存します。

特に大規模プロジェクトの場合、どのようにプロジェクト管理が行われるか、進行に問題があった場合の対処方法など、担当者のスキルが求められます。そのパッケージベンダーはどのような手法で開発を進めプロジェクトを成功に進める方針なのか、また担当者の技術力を事前に確認し、導入後の運用やカスタマイズの対応力も判断基準に含めましょう。

4.機能充足度と自由度を比較する

自社のビジネスモデルに必要な機能がすべて入ったパッケージやツールを選ぶのが一番シンプルでわかりやすい選定方法ですが、ECビジネスを成長させることを考えたとき、それだけでは十分に考慮されているとは言えません。この変化の早い時代に成長し続けるには、今必要な機能と将来必要な機能が変わらないということは考えづらいからです。自社に必要な機能を揃えているかどうかは、初期コストを抑えるための一つの判断基準になりますが、結局はトータルコストを抑えるという観点で考えなくてはなりません。

将来に渡って自社に必要な業務をそのシステムに揃え続けるには、パッケージやツールに合わせたビジネスを行うか、ビジネスに合わせてパッケージやツールをカスタマイズしていくかのどちらかしかありません。パッケージやツールに合わせたビジネスの内容とスピードで競争に勝ち続けることができる場合を除き、自社のビジネス展開に合わせてカスタマイズしていく必要があります。つまり、自由度が重要になってくるのです。

いくら自由度が高くても、最初が空っぽではあまり意味がありません。ECビジネスを運営する上で必要な機能を備えてなければなりませんが、自社のビジネスに合わせていくことを考えたときには、あったらいいなというレベルの機能はパッケージには不要なのかもしれません。この場合求めているのは自社への合わせやすさ、つまりは柔軟性と自由度になるので使わない機能が過多になってしまうとかえってシステムが複雑化し、カスタマイズ生産性が低いものとなってしまい、追加開発コストおよびメンテナンスのコストが高くなってしまいます。

将来に渡ってビジネスを成長させるにあたってどれほどの機能充足度を求めて、どれほどの自由度を求めるかを比較することは、その後の成功を大きく左右します。

5.セキュリティを比較する

ECサイトでは、顧客情報や決済情報の安全性が極めて重要です。サイバー攻撃による被害で、個人情報やクレジットカード情報が漏洩してしまうと、ビジネスの継続すら危ぶまれる重大な問題となってしまいます。お客様の信頼を失ってしまうだけでなく、賠償責任が生じる場合があります。ECパッケージのセキュリティ要件を確認し、セキュリティが担保されている製品を選びましょう。

また、サイバー攻撃の手法は日々進化しているため、セキュリティ対策のアップデート頻度や、導入後のセキュリティサポート体制も検討材料に含めるべきです。

ただし気を付けなければならないのは、こうしたサイバー攻撃に対応するにはパッケージだけの対応では不十分だということです。当然十分にセキュリティに対する対応がなされているパッケージやサービスを選ぶべきなのですが、同時にWAFやウイルス対策ソフト、IDSなど複数のセキュリティ製品を組み合わせて対策することを同時に検討しましょう。

6.プロジェクト管理方法を比較する

上記のポイント以外に、ECパッケージを提供する企業が御社向けのカスタマイズのノウハウやドキュメント、プログラムソースをどのように管理しているかもECパッケージの選定の上では重要な項目となります。ECサイトの運営には中長期的な目線で見た事業拡大や、システムメンテナンスも必要になります。導入時の担当者がいなくなったからわからなくなってしまう、というのは問題外として、担当がいなくとも後任が滞りなく追加開発や保守、メンテナンスできるような体制がきちんと整っているかは、安定してビジネスを成長させるためには欠かせないポイントになります。

時代の変化に伴ってトレンドが目まぐるしく変わるECサイトでは、導入したECパッケージが数年で時代遅れになることも珍しくありません。したがって、ECパッケージを選定する際には、そうした短期的かつ急激な時代・トレンドの変化にフレキシブルに対応できる管理・運用体制を備えたECベンダーかどうかを見極めることも忘れてはいけません。

パッケージを使ったECサイト構築がおすすめの企業

パッケージは、ECサイトを構築する方法のひとつですが、資金面や自由度の高さ、カスタマイズ性や技術面などの特性上、利用する企業によって向き不向きが分かれます。

以下では、特にECパッケージが向いている企業の特徴を3つのポイントに分けてご紹介します。

年商1億円以上のECサイトを構築したい企業

年商が1億円以上ある企業ならば、ECパッケージの検討をおすすめします。ECパッケージはデザインの自由度が高く、複雑なシステム連携やカスタマイズが可能であり、規模に応じた柔軟な対応ができるため、事業拡大を目指す企業に適しています。特に、近年では新しいパッケージが次々とリリースされ、スケーラビリティ拡張性が向上しており、フルスクラッチ開発にも匹敵する柔軟性を持っています。

しかし、パッケージを利用するにあたっては相応の費用が掛かります。初期費用は数百万円から数千万円程度が相場となり、フルスクラッチに比べてコストは抑えられるものの、決して低額ではありません。そのため、ECパッケージは平均年商1億円から50億円程度の中規模から大規模の自社ECサイトを運営する企業に特に適していると言えます。

オリジナルのECサイトを構築したい企業

ECパッケージの魅力の一つは、その高い自由度とカスタマイズ性にあります。ECパッケージは、ECサイト運営の基本的な機能を備えながらも、業界特有の要件や企業独自の機能を柔軟に追加・拡張したり、複雑なシステム連携ができるため、オリジナリティの高いECサイト構築が可能です。さらに、セキュリティ対策も充実しており、安心して運用できます。

ただし、カスタマイズの自由度が高い分、自社サービスをより具現化するためには、さまざまなリスクやイレギュラーを想定した設計力・知識を持った、適切なECサイト構築ベンダーの選定が成功の鍵となります。豊富な経験と技術力を持つベンダーを選び、リスクやイレギュラーに柔軟に対応できるようにすることが大切です。

また、構築後のシステムはいずれは古くなり、数年ごとにバージョンアップが必要となるため、これらの対応にあたりコストを抑えて計画的に推進できるかという将来的なコストも見据えた計画が求められます。

フルスクラッチよりも費用を抑えたい企業

フルスクラッチとは、既存のソフトウェアなどを一切使わずに、ゼロベースでECサイト構築することです。自社の既存システムと連携できるのはもちろんのこと、必要な要件を全て満たしたサイト構築、仕様変更にも柔軟に対応することが可能です。

しかしその一方で、初期費用はECパッケージを使う場合よりも大幅に高額となり、加えてインフラやサーバーも別途用意する必要があるので、総コストが非常に高くなります。これに見合うビジネスモデルを持つ企業でない限り、フルスクラッチ開発は現実的な選択肢ではありません。

一方、ECパッケージを利用すれば、短期間でフルスクラッチに匹敵するECサイトを構築しつつ、費用を抑えることが可能です。初期費用は数十万円から数千万円、月額費用は数万円から数百万円程度で済み、特に中規模から大規模なECサイトに適しています。

フルスクラッチ開発の費用相場については、以下の記事でさらに詳しく解説していますので、ご参考ください。

◆ ECサイトの構築にかかる費用の相場はいくら?

Web上にはさまざまなECサイトが存在していますが、それぞれの企業によってECサイトの構築方法や費用もさまざまです。ECサイトの構築を検討するにあたって、選択肢が多く存在している中でどのような方法を利用してECサイトを構築すれば自社にとって最適なのか、迷われたことはないでしょうか。
本記事ではECサイトの構築方法の種類、費用相場についてご紹介しています。
記事を読む  

おすすめのECサイト構築パッケージを比較

ひと昔前だと、中・大規模のECサイトを構築する際にはフルスクラッチしか選択肢がありませんでした。しかし、現在はパッケージが主流となり、また、多様なECパッケージが提供されているため、導入の選択肢が増えています。

提供されているパッケージの種類が豊富な分、パッケージ選定の際には迷いが生じやすく、予算機能に基づいて慎重に行う必要があり、自社に最適なパッケージを導入することが成功のカギです。ここでは、数多くあるパッケージの中でも、最新の主要なECパッケージをピックアップし、それぞれの特徴を交えつつ比較しながらご紹介していきます。

  •  SI Web Shopping
  • ecbeing
  • ebisumart(エビスマート)
  • EC-Orange
  • Commerce21
  • SAP Commerce Cloud

1.SI Web Shopping

「SI Web Shopping」は、中~大規模ECサイトを構築する際に最適なパッケージです。1996年に日本初のECサイト構築パッケージとしてリリースされて以来、大手企業でも広く利用されており、現在まで1,100以上のサイトの構築実績があります。

日々成長を遂げるEC市場で、顧客の満足度を向上させるための機能を揃えており、長期的にECサイトを活用したビジネス戦略をお持ちの企業に向いています。

SI Web Shoppingは豊富な標準機能だけでなく、高いカスタマイズ生産性が評価されています。パッケージの特徴である、「スクラッチよりも安価で、ASPよりも柔軟である」といった特性を最大限発揮できる構造になっています。一般的なECサイトはもちろん、普通のECパッケージでは実現が難しい複雑な要件にも対応可能です。

また、プログラムソースを公開することが可能なため、パッケージのデメリットであるブラックボックス化(作った会社でないとわからないという状態)を避けることができます。また、プログラムソースが公開さえているので、エンジニアがいる会社であれば、カスタマイズを内製化することもできます。そういった内製化の支援プログラムを提供しています。

SI Web ShoppingのHP:https://service.dgcm.jp/siws/

SI Web Shoppingの導入事例「よかもーる」

九州フィナンシャルグループ(KFG)の子会社、九州みらいCreationは、南九州に特化したECモール「よかもーる」の立ち上げにあたり、SI Web Shoppingを導入しました。

このプロジェクトの目的は、南九州地域の中小企業がデジタルシフトに対応し、地域経済の活性化を促進するためのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することです。地域の事業者がオンラインを通じて全国へ販路を拡大し、競争力を高めるために、地域密着型のECモールを構築し、地元の中小企業がデジタルの世界で持続的に成長できる基盤を提供することが求められていました。

SI Web Shoppingが選定された大きな理由は、長期的な内製化を支援するオープンアーキテクチャです。SI Web Shoppingはプログラムソースとデータベースを完全公開しており、システムの柔軟なカスタマイズと内製化が可能なため、よかもーるの運営チームが将来的に自走できる体制を構築するために最適なプラットフォームでした。

さらに、開発フェーズにおいては、スピード感が求められていました。2023年4月に新会社が設立され、わずか2ヶ月後の同年6月にはECモールのローンチが予定されていましたが、ここでSI Web Shoppingのパッケージ完成度の高さと、DGコマースのプロジェクトマネジメント体制が大きく寄与しました。細かくマイルストーンを調整しながら、必要な機能を優先的に実装することで、厳しいスケジュールを遵守しつつも、迅速かつ高品質なモール立ち上げを実現しました。

2.ecbeing

ECサイトツールの「ecbeing」は、マーケティング支援機能や最新のトレンドに強い高いカスタマイズ性が魅力です。

主な特徴として、SNS活用やSEO対策、リスティング広告などでアクセス数をアップさせる機能、サービス分析やアクセスログ解析など注文率をUPさせる機能があります。加えてワンストップサービスで素早く注文・出荷・商品・顧客管理まで行う機能と、24時間365日常駐サポートのセキュリティも安心できるポイントです。

ecbeingのHP:https://www.ecbeing.net/

3.ebisumart(エビスマート)

株式会社インターファクトリーが提供する小・中規模ECサイト向けのECパッケージ製品です。ebisumart(エビスマート)はクラウドで提供されているということもあり、導入コストを削減しつつ、短期導入が可能な製品です。

クラウド型でありながらカスタマイズに対応できることが特徴です。

料金形態がアクセス数によって変動する従量課金プラン、毎月固定の固定課金プラン、売上に対して一定の料率を支払うレベニューシェアプランが用意されており、ビジネス規模や成長に応じた柔軟な選択肢が用意されており、コストの最適化が可能です。

処理能力としては、1分間の最大処理可能件数647件、1分間の最大アクセス数5万アクセスが可能とされています。

ebisumartのHP:https://www.ebisumart.com/

4.EC-Orange

「EC-Orange」は、新しくECサイトを立ち上げたい企業にはもちろんのこと、他社と差別化を図りたい企業や、既存サイトのアップデートに悩んでいる場合にもおすすめのパッケージです。VRコマースなど新しいスタイルでサイトを構築できる自由度の高いパッケージで、顧客のニーズに応じたなサイトを制作できます。

マルチテナント型のECサイト構築が可能なので、複数のブランドを展開する企業にも最適です。また、実店舗を運営している企業は在庫・商品情報・顧客情報・配送情報など一元管理し実店舗とサイト情報をシェアできます。英語や中国語でECサイトを表示でき、管理画面も多言語対応なのも外国人従業員の多い職場にとっては大変便利です。

EC-OrangeのHP:https://ec-orange.jp/

5.Commerce21

「Commerce21」は株式会社コマースニジュウイチ社が提供する大規模ECサイト向けのECパッケージ製品です。EC関連ソリューションの連携やオリジナル機能の構築など、柔軟に対応可能なプラットフォームを提供していることが特徴です。安定稼働や自由度を求める企業におすすめです。

マイクロサービス志向のプラットフォームを採用しており、高いスケーラビリティが特徴のパッケージです。APIを活用し、様々なサービスと連携する構成を得意としています。

Commerce21のHP:https://www.commerce21.co.jp/

6.SAP Commerce Cloud

「SAP Commerce Cloud(旧:SAP Hybris)」は、オムニチャネルに対応する豊富な機能と、カスタマイズの拡張性を兼ね備えたECパッケージです。国内ECサイト構築システム調査やフォレスター・リサーチといった世界の2大調査機関で高い評価を受けています。

シンプルなコマース設定でコストを削減、カート支払いから受注管理までのプロセスをサポートしてくれます。EC展開をスムーズに行うテンプレートを提供し、時代の変化に素早く対応・拡張できるアーキテクチャです。

SAP Commerce CloudのHP:https://www.sap.com/japan/products/crm/e-commerce-platforms.html

まとめ

当記事では、ECパッケージの概要・メリット・デメリットから、パッケージの種類、比較ポイントまでをご紹介しました。ECパッケージは標準で充実した機能を搭載しておりカスタマイズ性にも優れているため、開発期間・開発コストを抑えつつオリジナリティ・利便性を備えたECサイトを構築することが可能です。

ECパッケージでECサイトを構築する際には、自社の規模・目的・用途・目標・求める要件といった多角的視点でパッケージを選定することが、より充実したECサイトをスムーズに構築する近道となります。

弊社では、SI Web Shoppingを含む複数社のECパッケージ・サービスを比較した資料も無料で提供しています。自社に適したECパッケージをお探しの方は、ぜひご活用ください。


RECENT POST「ECサイト構築」の最新記事


ECサイト構築

ECプラットフォームとは?主要5種類の特徴や選定方法を徹底比較

ECサイト構築

ECサイトの構築費用の相場は?手法別の相場や見積もり時のポイント、注意点を解説

ECサイト構築

【解説】ECサイトの売上拡大に必要な4つのポイント

ECサイト構築

ECサイトリニューアルの実践ガイド | 売上アップを実現する手順・注意点を解説

ECパッケージとは?機能や比較ポイント、中~大規模EC向け6種を紹介