ECサイトの競争が激化する現代のデジタルマーケティング環境において、顧客に対してパーソナライズされた体験を提供することは、売上やコンバージョン率の向上に不可欠な要素となっています。その中心となるのがレコメンドエンジンです。ユーザーの行動データや購入履歴をもとに、最適な商品を自動的に提案するこのツールは、顧客によりパーソナライズされた購買体験を提供し、売上を支える役割を果たしています。
多くの企業がレコメンドエンジンを導入する背景には、売上の向上やリピーターの獲得といった具体的な成果があるためですが、レコメンドエンジンには多くの種類があり、サービスごとに機能や価格が異なるため、どのツールが自社に最適なのかを判断することは容易ではありません。
本記事では、レコメンドエンジンの機能や仕組みから、具体的な効果、おすすめツール7選の徹底比較、そして自社に最適なツールの選び方について詳しく解説します。
レコメンドエンジンの基本:機能と仕組みについて
1.レコメンドエンジンとは?
レコメンドエンジンとは、ECサイトに訪れるユーザー一人ひとりの過去の行動データや購入履歴などを分析し、そのユーザーにとって最適な商品やサービスを提案するシステムです。 特に顧客体験のパーソナライゼーションを実現するために活用され、顧客がどのような商品に興味を持っているかを予測しタイムリーに提案することで、売上の向上や顧客満足度の向上を図ります。
レコメンドエンジンの基本的な仕組みは以下の通りです。
- データ収集:ユーザーの閲覧履歴、購買履歴、検索キーワード、デモグラフィック情報などを収集します。
- データ分析:収集したデータを分析し、ユーザーの嗜好や行動パターンを把握します。
- アルゴリズムの適用:分析結果に基づいて、適切なレコメンドアルゴリズムを適用します。
- レコメンデーションの生成:アルゴリズムによって、各ユーザーに最適な商品やコンテンツを選定します。
- 表示:選定された商品やコンテンツをユーザーに表示します。
従来は「この商品を購入した人はこの商品も購入しています」といった、誰にでも同じように表示される汎用的なレコメンドが主流でしたが、近年では、ユーザーの属性や購買履歴、サイト内行動などを加味し、より顧客ごとのニーズに対応したリアルタイムでのレコメンドが求められるようになっています。そして、この高度なパーソナライゼーションを実現するために、AIや機械学習を活用したレコメンドエンジンが開発され、導入が進んでいます。
2.主な機能
購入履歴ベースのレコメンド
過去に購入した商品をもとに、関連する商品を提案する機能です。これにより、顧客は一度購入した商品に近い商品や、その商品に追加で必要になる商品を簡単に見つけることができます。
例:「この商品を購入した人は、こんな商品も購入しています」
閲覧履歴ベースのレコメンド
サイト上での閲覧履歴に基づいて、類似商品や関連カテゴリーの商品を提案します。特に、新規訪問者に対しては、この機能が効果的です。
例:「最近チェックした商品」「あなたにおすすめの商品」
人気商品レコメンド
他のユーザーに人気のある商品を推奨することで、顧客がトレンド商品を簡単に発見し、購入意欲を高めます。この機能は特に、新規訪問者やリピーターに効果的です。
例:「今週の売れ筋ランキング」「カテゴリー別ベストセラー」
パーソナライズされたレコメンド
個々のユーザーのデータに基づいたパーソナライズレコメンドが最も重要な機能です。例えば、年齢や性別、居住地、過去の行動パターンを組み合わせて、ユーザーがまだ見ていないが興味を持つ可能性の高い商品を予測し、提案します。
3.代表的なレコメンドアルゴリズム
レコメンドエンジンの性能は、どのアルゴリズムを採用するかによって大きく左右されます。さまざまなアルゴリズムが存在し、それぞれ異なる特性を持っているため、ECサイトの規模や顧客層に応じて最適なものを選ぶことが重要です。
ここでは、代表的なレコメンドアルゴリズムを3つ紹介します。
協調フィルタリング
協調フィルタリングとは、ユーザー間の行動データの類似性を基に商品をレコメンドする手法です。具体的には、他のユーザーが購入した商品や閲覧した商品に基づいて、同じような行動パターンを持つユーザーに対して類似商品を提案します。
- メリット:ユーザー自身も気づいていなかったような、意外性のある商品やサービスとの出会いを提供できる可能性があります。
- デメリット:新規ユーザーや新商品に対しては、十分なデータが揃うまで適切なレコメンドが難しいという問題があります。
コンテンツベースフィルタリング
コンテンツベースフィルタリングは、商品自体の属性に基づいてレコメンドを行う手法です。例えば、特定の商品のカテゴリー、特徴、価格帯などに基づいて、ユーザーが過去に興味を持った商品と類似したものを提案します。例えば、本を購入したユーザーに対して、同じ著者や同じジャンルの本をレコメンドします。
- メリット:ユーザーの過去の興味に基づいたレコメンドが可能です。
- デメリット:類似した属性の商品のみがレコメンドされるため、ユーザーの潜在的なニーズや予想外の商品との出会いが少なくなくなります。
ハイブリッド型
ハイブリッド型は、協調フィルタリングとコンテンツベースフィルタリングを組み合わせた手法です。これにより、それぞれのアルゴリズムの欠点を補完し、精度の高いレコメンドを提供します。例えば、協調フィルタリングで類似ユーザーを見つけ、さらにコンテンツベースフィルタリングでそのユーザーに最適な商品を提案する、といった形で併用されます。
- メリット:協調フィルタリングとコンテンツベースフィルタリングの長所を活かし、精度の高いレコメンドが可能になります。
- デメリット:実装が複雑になり、リソースが多く必要になることがあります。また、適切なバランスを取るためのチューニングが必要です。
レコメンドエンジンのメリット4選
1.売上の向上
クロスセル(関連商品を提案)やアップセル(上位の商品を提案)を効果的に行うことで、顧客一人あたりの購入額を増やすことができます。たとえば、ある商品を購入しようとしている顧客に、他の関連商品やオプションを推奨することで、追加購入を促進します。
例えば、家電量販店であればノートパソコンを購入した顧客にマウスやバッグをレコメンドしたり、アパレルであればTシャツを購入した顧客にボトムスをレコメンドしたりすることで、客単価の向上に繋げます。
2.コンバージョン率の向上
レコメンドエンジンは、ユーザーがどの段階で商品に興味を持ち、購入を検討しているかを解析し、適切なタイミングで商品を提示します。これにより、顧客は探している商品を迅速に見つけられ、購入までの意思決定が短縮されます。結果として、コンバージョン率が劇的に向上します。
3.顧客満足度とリピーター率の向上
自分にぴったりの商品を簡単に見つけられると感じるとき、顧客の満足度が向上します。特に、再訪時に前回の閲覧や購入履歴に基づいた推奨がされることで、「このサイトは自分を理解している」と感じ、リピーターとしての定着率が上がります。
さらに、Repro株式会社が行った調査によると、約35%の顧客がECサイトで便利だと感じる、またはあると嬉しいと感じる機能として「自分に合わせたおすすめ商品の提案」を挙げています。このデータからも、パーソナライズされたレコメンドが顧客満足度の向上に大きく寄与していることを示しています。
出典:Repro株式会社「【ECサイト利用実態調査2024】ユーザーがECサイトに求めることは「リアルタイム在庫表示機能」や「簡単な返品交換プロセス」」
4. 在庫回転率の向上
レコメンドエンジンを活用することで、特定の商品や売れ残りそうな在庫を優先的にレコメンドし、効率的に在庫を消化することが可能です。これにより、在庫回転率が向上し、キャッシュフローの改善にもつながります。
具体的な活用例:
- シーズン終了間近の商品のプロモーション
- 新製品発売前のクリアランス販売
適切なタイミングでのレコメンドが、在庫管理の最適化と売上の向上を同時に実現します。
主要なレコメンドエンジンの徹底比較|おすすめ7選
レコメンドエンジンの基礎知識、メリットを理解いただいたところで、ここからはおすすめのレコメンドエンジン7選を紹介いたします。
NaviPlusレコメンド(ナビプラス株式会社)
提供会社 |
ナビプラス株式会社 |
初期費用 |
要問合せ |
月額費用 |
要問合せ |
機能 |
「行動履歴」「訪問者導線」「アイテム属性」「訪問者属性」の4つの要素を反映したレコメンドコンテンツを提供 |
導入実績 |
500社以上 株式会社急百貨店、株式会社AOKI、株式会社ディーエイチシー、 |
「行動履歴」「訪問者導線」「アイテム属性」「訪問者属性」という4つの要素を総合的に分析し、ユーザー一人ひとりに最適化されたレコメンドコンテンツを提供しています。2010年に設立後、長年に渡ってECサイト向けのソリューションを提供しており、導入実績も500サイト以上にのぼります。長年の経験と実績に基づいたサポート体制が万全なのはもちろんのこと、AI技術も積極的に取り入れるなど、なお進化を続けています。
また、レコメンドエンジン以外にも、サイト内検索ツールやレビューツール、リタゲメールツールなども提供しているため、これら製品と掛け合わせることでECサイトのパーソナライゼーション強化を総合的にできるでしょう。
EC Intelligence(株式会社シナブル)
提供会社 |
株式会社シナブル |
初期費用 |
200万円~ |
月額費用 |
10万円~ |
機能 |
テキストマイニング+協調フィルタリングにより高度なレスポンスで商品を表示 |
導入実績 |
株式会社クロシェ、株式会社ハルメク、 |
EC IntelligenceはECサイト向けのオールインワンMA/CRMツールであり、その一機能としてレコメンド機能も提供しています。
他のレコメンドエンジンと比較した際の大きな特徴として、レコメンド機能単体ではなく、ECサイトの運営に必要なさまざまな機能(サイト内検索、Web接客、カゴ落ち対策など)を統合したオールインワンツールであることが挙げられます。これにより、データの一元管理が可能となり、より精度の高いレコメンドを実現するとともに、運用コストの削減や業務効率化にも貢献します。
なお、レコメンド機能単体としても優れており、ユーザーの行動履歴やアイテム属性、顧客セグメントなどを総合的に分析し、個々のユーザーに最適化されたレコメンドを提供しています。「ECサイトの売上を上げたいけど何から手を付けたらいいかわからないから一つのツールに全部任せたい」という方におすすめです。
アイジェント・レコメンダー(シルバーエッグ・テクノロジー株式会社)
提供会社 |
シルバーエッグ・テクノロジー株式会社 |
初期費用 |
要問合せ |
月額費用 |
要問合せ |
機能 |
リアルタイムレコメンド |
導入実績 |
株式会社デイトナ・インターナショナル、 |
同社はAIを活用したマーケティングサービスを提供している会社です。アイジェント・レコメンダーは、独自開発したAIがユーザーの行動データを総合的に分析し、個々のユーザーに最適化されたレコメンドをリアルタイムで提供します。
また、導入後のサポート体制も力を入れており、効果を最大化するために仮説立案、検証、分析などもコンサルタントよりサポートがあるので安心できます。
ZETA RECOMMEND(ZETA株式会社)
提供会社 |
ZETA株式会社 |
初期費用 |
要問合せ |
月額費用 |
要問合せ |
機能 |
リアルタイムレコメンド |
導入実績 |
株式会社コメリ、株式会社アルペン、株式会社ゲオ、株式会社丸井 など |
ユーザーの行動データや購入履歴を分析して、最適な商品をリアルタイムで提案します。
ZETA RECOMMENDの特筆すべき点として、サイト内検索やレビュー、キュレーションなど、他のZETA製品との連携が挙げられます。これにより、より包括的なユーザー体験の向上が可能となります。実際に同社の提供するツールと連携させて成果を出している会社様も沢山いるようです。
Rtoaster action+(株式会社ブレインパッド)
提供会社 |
株式会社ブレインパッド |
初期費用 |
要問合せ |
月額費用 |
要問合せ |
機能 |
自動レコメンド |
導入実績 |
カルチュア・エンタテインメント株式会社、株式会社ファンケル、 |
顧客属性、サイト内行動、指向性などさまざまなデータを用いて顧客ごとに最適なレコメンドを実現させています。また、ルールベースと自動最適化の両方のレコメンド手法を採用しているため、色々なパターンでの仮説検証を効率よく実施できます。
また、同社はCDP(カスタマーデータプラットフォーム)の「insigt+」という、データ統合サービスも提供しています。insight+とaction+を連携させることで、顧客のリアルタイム分析から施策実行までシームレスに行うことができます。
さぶみっと!レコメンド(株式会社イー・エージェンシー)
提供会社 |
株式会社イー・エージェンシー |
初期費用 |
99,000円 |
月額費用 |
PV数による従量課金 |
機能 |
CV予測レコメンド |
導入実績 |
株式会社東旗、株式会社ソーシャルインテリア、 |
サービス提供開始以来10年以上の実績があり、1,700サイト以上の導入実績を誇る、国内最大級のレコメンドエンジンサービスとして知られています。
このサービスの最大の特徴は、「手軽さ」にあり、導入にあたっては、サイトへのタグ設置のみで最短1週間での運用開始が可能です。また、サイト内行動や購入履歴を基におすすめ商品をメールで配信する「レコメンドメール機能」も実装しているのもポイントです。
LogrecoAI(株式会社Logreco)
提供会社 |
株式会社Logreco |
初期費用 |
要問合せ |
月額費用 |
要問合せ |
機能 |
オススメ表示 |
導入実績 |
要問合せ |
独自設計のアルゴリズムとAI技術を融合させたツールを提供しています。また、導入時に入念にチューニングを行うため、導入後は手間をかけずに運用できるようなので、手放しで運用したい方におすすめです。もちろん、導入後の調整は管理画面からもできるようです。
また、マーケティング支援もオプションで提供しており、レコメンドエンジンにとどまらずプロモーション戦略やECサイトの運営全般の相談ができるのもポイントです。
レコメンドエンジンの選び方
前章でおすすめのレコメンドツールを7つご紹介いたしましたが、どれも魅力的に感じて、選ぶのが難しいと感じるのではないでしょうか。レコメンドエンジンを選ぶ際には、以下のポイントに注目することが重要です。
必要な機能を満たしているか
自社のニーズに合った機能を備えているかどうかが非常に重要です。すべてのレコメンドエンジンが同じ機能を提供しているわけではなく、それぞれのエンジンには特定の強みや制限があります。
まずは、レコメンドエンジンを導入する明確な目標を設定し、そこから必要な機能を洗い出しましょう。そうすることで各ツール提供会社とスムーズにすり合わせができ、自社に最適なツールがわかるでしょう。
予算に見合ったコストで導入できるか
初期費用と月額費用の両方を慎重に検討することが大切です。多くのサービスは、月額費用が月間PV数(ページビュー数)に応じて変動するため、自社のPV数をしっかりと把握し、それに基づいて正確なコストを見積もる必要があります。
また、ツールによっては成果報酬型の料金体系や、機能追加に伴うオプション費用が発生する場合もあります。これらの詳細をベンダーに確認し、予算オーバーを防ぐために事前に総費用を明確にしておきましょう。
そして、最も重要なのは、効果とコストのバランスです。費用対効果をしっかりシミュレーションし、導入後の運用を長期的に見据えた計画を立てることが、成功への鍵となります。
導入後のサポートや運用支援がしっかりしているか
レコメンドエンジンの導入は、スタート地点に過ぎません。重要なのは、導入後のサポート体制です。運用中にトラブルが発生した場合、どれだけ迅速にサポートを受けられるか、また新しい機能のアップデートや最適化に対して柔軟に対応できるかが、長期的な運用の安定性を左右します。
サポート体制の確認ポイントとしては、24時間対応のカスタマーサポート、導入後のトレーニングや専任の担当者の有無、問題発生時の解決までのスピードなどが挙げられます。また、ツールを効果的に活用するために、技術的な支援がどの程度充実しているかも重要な要素です。運用をサポートする環境が整っているかどうかを確認することで、長期的に安心して活用できます。
まとめ
レコメンドエンジンは、ECサイトにおける売上やコンバージョン率の向上に欠かせないツールです。ユーザーごとのニーズに合わせたパーソナライズされた提案を行うことで、顧客満足度を向上させ、リピーターの獲得や在庫管理の最適化にもつながります。
本記事では、レコメンドエンジンの基本的な機能や仕組みから、売上向上や顧客満足度向上の具体的なメリット、そして代表的なレコメンドエンジン7選の比較を行いました。最後に、自社に最適なレコメンドエンジンを選ぶ際に考慮すべきポイントとして、導入コスト、カスタマイズ性、データ活用のしやすさ、サポート体制も紹介しました。
自社に合ったレコメンドエンジンを選定し導入することで、ECサイトの競争力を高め、長期的な売上増加を目指しましょう。
当社のグループ会社であるナビプラスでは、7選でも紹介した「NaviPlusレコメンド」を提供しています。
こんな方はぜひ一度お問合せフォームよりご相談ください。
- レコメンドエンジンについて専門家からもっと詳しく話を聞いてみたい
- 自社に合うツールを教えてほしい
- NaviPlusレコメンドに興味あり!
また、以下の資料では、レコメンドを有効活用し売上げアップする上でのポイントについて解説しています。こちらも併せてご覧ください。
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