本記事では、不正検知サービスの概要から導入メリット、おすすめツール6選の徹底比較、そして比較検討時のポイントについて、分かりやすく解説します。
不正リスクを最小限に抑え、安全な取引環境を構築したいとお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。
不正検知サービスの基本:サービスタイプと仕組みについて
不正検知サービスとは、不正な取引を検知・防止するためのサービスです。不正検知サービスには、大きく分けて「ルールベース型」と「AIベース型」の2種類があります。それぞれ異なる仕組みで動作しており、特徴やメリット・デメリットに違いがあります。本章では、それぞれのタイプの仕組み、メリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
1.不正検知サービスの仕組みについて
ルールベース型
ルールベース型の不正検知サービスは、事前に設定されたルールに基づいて不正取引を検知する仕組みです。これらのルールは、過去の不正取引から導き出された典型的な不正パターンや、その業界特有の不正パターンに応じて作られます。
- データの収集と基準設定
ルールベース型では、ユーザーのアクセス履歴、購入履歴、デバイス情報などのデータを収集し、それに基づいて不正取引の典型的なパターンを抽出します。この情報から、不正行為の可能性が高いパターン、例えば「1時間以内に同じクレジットカードで複数回の取引が発生する」といったルールを複数設定します。 - ルールに基づいた判定
設定されたルールに基づき、条件に合致する取引を不正と判断します。このため、ルールベース型は事前に決めた不正パターンを即座に検知することが可能です。
AIベース型
AIベース型の不正検知サービスは、AI/機械学習を活用し、取引データやユーザー行動をリアルタイムで分析し、不正の兆候を自動的に検知する仕組みです。
- データの収集と機械学習
AIベース型では、ユーザーの行動履歴、デバイス情報、購入パターン、アクセスの頻度など、多岐にわたるデータを収集します。その後、機械学習モデルを用いて、通常の取引と異なる異常なパターンを学習します。AIは大量のデータを基に、通常の行動パターンと不正の兆候を判別する基準を自動的に構築します。 - 異常行動のリアルタイム検知
機械学習によってモデルが学習された後、AIはリアルタイムで取引を評価し、異常な行動を検知します。例えば、通常の購入パターンから大きく逸脱した急激な購入量の増加や、通常のアクセス地域とは異なる地域からのアクセスが発生した場合、それを不正行為として検知することが可能です。また、検出結果を基に継続的に学習し、精度を向上させることができます。
2.ルールベース型/AIベース型のメリット・デメリット
ルールベース型
- メリット:設定したルールに基づき即座に判定ができるため、運用がシンプルなのがメリットです。また、運営者が自由にルールをカスタマイズできるため、特定の不正行為に対してピンポイントで対策を取ることが可能です。比較的安価なサービスもあり導入ハードルが低いため、小規模な事業者でも利用可能です。
- デメリット:設定したルールに依存するため、新しい手口やルール外の不正を検知するのが難しい場合があります。日々変化する不正の手口に対して、ルールチューニングが追いつかないという問題があります。また、ルールの見直しや更新が頻繁に必要であるため、運用コストも増加しやすいというデメリットもあります。
AIベース型
- メリット:学習を重ねることで精度が向上し、より高度な不正にも対応できる点です。また、データ量が増えるほど、AIが異常行動のパターンを精密に捉えるため、長期的な導入効果が期待できます。さらに、新しい不正の手口にも適応しやすいため、日々新しく発明される不正の手口に対して柔軟な対応が可能です。
- デメリット:ルールベース型と比較すると導入開発の難易度が高く、コストが高いことです。
仕組みとメリット・デメリットまとめ
項目 |
ルールベース型 |
AIベース型 |
仕組み |
あらかじめ設定されたルールに基づき不正を検知 |
機械学習を活用し、不正パターンを学習して検知 |
メリット |
シンプルな運用、 |
新しい手口に柔軟に対応可能、 |
デメリット |
新たな手口に対応が難しい、 |
導入・運用コストが高い |
不正検知サービスの導入が必要な背景:不正被害の増加
不正検知サービスの導入が求められる背景には、先述した通り、不正取引が年々増加していることが影響しています。以下に、導入が必要とされている背景を説明いたします。
1.クレジットカード不正利用の増加
日本クレジット協会が2024年9月に発表した調査によると、クレジットカード不正利用被害額は年々増加しており、2023年の被害額は540億円と、深刻な問題であることがわかります。最新データによると2024年1月~6月の被害額は268.2億と報告されており、2023年の同期間の262.8億から5.4億増加しており、2024年度も過去最高の被害額を更新すること予想されます。
2.政府によるセキュリティガイドラインの強化
政府は不正が年々増加していることを受けて、企業に対してセキュリティ対策のより一層の強化を求めています。クレジット取引セキュリティ対策協議会の発行しているクレジットカード・セキュリティガイドライン【5.0版】では、2025年3月末までに原則すべてのEC加盟店にEMV 3-Dセキュアの導入を求めています。EMV 3-Dセキュアは、オンラインショッピング時にクレジットカード情報の盗用を防ぐための本人認証サービスであり、取引の安全性を高める重要な役割を担っています。EMV 3-Dセキュアについて、詳細は以下のブログで解説しています。
EMV 3-Dセキュア(3Dセキュア2.0)とは?義務化にあたり確認すべきポイントと対策
しかしながら、クレジットカードの不正利用を防止するためには、決済時に本人認証を行うEMV 3-Dセキュアの導入だけでは十分ではなく、決済前や決済後を含む多面的かつ重層的な不正対策の実施が必要とガイドラインで述べられています。そのため、決済前後の不正も検知できる不正検知サービスの導入も今後必要になることが予想されます。
不正検知サービスのメリット
不正検知サービスを導入することで、企業は多くのメリットを得られます。ここでは、不正検知サービスの主要な3つのメリットについて説明します。
1.不正注文を未然に防ぐことで業務コストを削減できる
不正検知システムを導入することで、業務コストを削減できます。注文のすべてを目視や手作業でチェックするのは取引量が増えるほど業務負荷が大きくなります。また、日々不正の手口も高度化しているため、高精度で不正を見つけ出すことは難しいと言えるでしょう。一方で、不正検知システムは不正を自動で検知できるため、取引量が多くても精度を下げることなく対応できます。人的リソースを削減しつつ、常に高い精度で不正を防止することは大きなメリットとなります。
2.企業イメージを保護できる
ECサイトで不正取引が発生すると、顧客にとってそのサイトは「安全ではない」というイメージが広がり、ブランドの信用を失います。不正検知サービスを活用することで、取引の安全性を保ち、顧客からの信頼を守ることができます。
3.オーソリ承認率の低下を抑制する
不正利用が継続的に発生すると、加盟店に対するカード会社のオーソリ承認基準が厳しくなる可能性があります。その結果、正当な顧客の利便性が下がり、売上機会の損失に繋がる可能性があります。
不正検知サービスを導入することで、リスクの高い取引のみを効率的にブロックすることができます。これにより、オーソリ承認率の低下を抑制し、正当な顧客にはスムーズな購買体験を提供することができます。
不正検知サービス徹底比較|おすすめ6選
不正検知サービスのの基礎知識、メリットを理解いただいたところで、ここからはおすすめの不正検知サービス6選を紹介いたします。
O-PLUX(かっこ株式会社)
提供会社 |
かっこ株式会社 |
初期費用 |
30万円 |
月額費用 |
3万円~ |
検知手法 |
ルールベース |
事例 |
110,000サイト以上 |
110,000サイト以上の圧倒的な導入実績を誇ります。豊富な実績から膨大な取引データベースを保持しているのが特徴です。導入後は同社のサポート担当がルールチューニングを実施してくれるそうです。
また、O-PLUXは決済時点の不正を検知するサービスですが、同社は他にも「o-motion」という不正アクセス検知サービスや「鉄壁PACK」というフィッシング対策サービスも取り扱っているため、それらのサービスを組み合わせることで決済時だけではなく決済前後の対策もできるところも特徴です。
ASUKA(株式会社アクル)
提供会社 |
株式会社アクル |
初期費用 |
要問合せ |
月額費用 |
要問合せ |
検知手法 |
ルールベース |
事例 |
30,000サイト以上 |
ライトに利用できるのが一番の特徴です。申し込みから利用開始まで最短1~2週間と、導入までのリードタイムが短いため、一刻も早く不正検知サービスを導入したい方はおすすめです。また、利用料も比較的安価なため、まずは不正検知サービスを試してみたいという方にもおすすめです。全件ASUKAが決済を通すか否か判定するため、作業工数削減に繋がります。
ReD Shield(代理店:株式会社スクデット)
提供会社 |
株式会社スクデット |
初期費用 |
要問合せ |
月額費用 |
要問合せ |
検知手法 |
ルールベース |
事例 |
要問合せ |
アメリカのACI Worldwide Inc.が提供するソリューションを、株式会社スクデットが代理店として販売および導入サポートを行っています。
VeriTrans4G(DGフィナンシャルテクノロジー)やGMOペイメントゲートウェイ(GMOペイメントゲートウェイ)といった大手決済代行サービスと連携しているため、カード番号を全桁で照合することができます。これにより、過去に不正利用されたカード番号を正確に特定し、同じカードでの不正利用の再発防止を実現できるところが最大の特徴です。多くのサービスはクレジットカード番号の上6桁と下4桁で照合しているため、比較すると精度が高いといえます。
ルールベース型であるため、柔軟にルールを設定することができ、各企業のニーズに合った不正対策を提供します。さらに、ルールのチューニングはスクデット社が担当するため、導入後も専門家による適切な運用が可能です。
また、ReD Shieldはグローバルの大手ブランド・企業での導入実績が豊富で、トップクラスのシェアを誇ります。これにより、安心してサービスを利用できる信頼性を持っています。さまざまな業種に導入されており、月間数千件から数十万件の決済トランザクションを持つ事業者まで、幅広い規模の事業者に対応しています。
Sift(代理店:株式会社スクデット)
提供会社 |
株式会社スクデット(代理店) |
初期費用 |
要問合せ |
月額費用 |
要問合せ |
検知手法 |
AIベース |
事例 |
34,000サイト以上 |
アメリカのSift Science, Inc.が提供するソリューションを、株式会社スクデットが代理店として販売および導入サポートを行っています。SiftはAI型不正検知のパイオニアであり、最先端の技術を備えた新世代型のソリューションです。機械学習を活用し、不正の傾向を自動的に学習し、ユーザーの行動をリアルタイムでモニタリングすることで、不正行為の兆候を即座に検知します。
Siftは世界中で34,000以上のサイトに導入されており、年間1兆件以上の取引データを取り込む大規模なグローバルネットワークを有しています。このネットワークにより、日々不正パターンを学習し続け、高精度なリスク判定が可能です。また、進化する不正行為にも迅速に対応できます。
さらに、Siftは決済時だけでなく、サイト内でのユーザー行動データも取得・分析し、クレジットカードの不正利用にとどまらず、偽アカウント作成やアカウント乗っ取りといったさまざまな不正行為にも対応しています。
Rikified(Riskified Japan株式会社)
提供会社 |
Riskified Japan株式会社 |
初期費用 |
要問合せ |
月額費用 |
要問合せ |
検知手法 |
AIベース |
事例 |
2,000社以上 |
イスラエル発のサービスです。AIを活用しリアルタイムで不正注文を検知・防止します。チャージバック保証を行っており、もし不正注文によるチャージバックが発生した場合、Riskifiedが100%保証しているそうです。不正行為の手段が日々高度化しているため、AIベースのサービスはおすすめです。
Forter(Forter Pte Ltd)
提供会社 |
Forter Pte Ltd |
初期費用 |
要問合せ |
月額費用 |
要問合せ |
検知手法 |
AIベース |
事例 |
ロクシタンジャポン株式会社、フットロッカーアトモスジャパン合同会社 など |
イスラエル発のサービスで、現在はアメリカに本社を構えています。日本ではSBペイメントサービス株式会社が取り扱っているようです。AI型のサービスのため、既知の不正パターンだけでなく、リアルタイムで新たな手口の不正行為も自動で判定しブロックしてくれます。また、アカウント乗っ取りや、プロモーション悪用などそれぞれに特化したサービスも取り扱っており、複数ソリューションを組み合わせることであらゆる不正行為に対策することができます。
不正検知サービスを導入する際の比較ポイント
不正検知サービスを導入する際には、サービスの性能やコスト、サポート体制など、さまざまな観点から比較検討を行うことが重要です。ここでは、導入時に注目すべき3つのポイントについて解説します。
1.精度の比較
不正検知サービスを選ぶ際、まず重要なのは精度の比較です。第2章で紹介したように、各サービスは異なるアルゴリズムや検知技術を採用しており、AIや機械学習の活用度合いによっても精度は大きく異なります。
AIベース型のサービスは、AIや機械学習が自動学習するため、日々高度化する不正行為にも即座に対応することができ、精度が高いと言えます。一方ルールベース型は事業者の要望をルール化できるため柔軟性は高いですが、あらかじめ設定したルールを根拠に判定するため、日々変化する不正の傾向に対応できない側面もあります。
2.コスト
次に重要なのはコストの比較です。不正検知サービスの導入には、初期導入費用やライセンス費用、月額のランニングコストなどが発生します。また、トランザクションごとの料金や追加オプションの費用が発生するケースもあります。コストを評価する際には、単に料金の安さだけでなく、サービスの効果やROI(投資対効果)を考慮することが大切です。例えば、初期費用が低く抑えられていても、精度が低くて不正取引を十分に防げない場合、最終的にはコストが増加する可能性があります。自社の規模や不正リスクに応じたコストのバランスを見極めることが求められます。
3.サポート体制
最後に、サポート体制も導入時の重要な比較ポイントです。不正検知サービスの運用には、導入後のトラブル対応やシステムのメンテナンスが必要です。導入時における設定や運用に関するサポートが充実しているかどうか、トラブル発生時に迅速に対応できるかといった点を確認しましょう。特にルールベース型のシステムはルールのチューニングによって検知の精度が左右されるため、しっかりチューニングサポートをしてくれるサービスを選ぶ必要があります。
また、24時間体制のサポートや専任担当者がつくサービスは、企業にとって大きな安心材料となります。さらに、定期的なアップデートや新たな不正手法への対応能力があるかどうかも重要です。これにより、サービスを長期的に安心して利用できる環境が整います。
4. まとめ
不正検知サービスは、ECサイトにおける安全性を守り、顧客の信頼を維持するために欠かせない対策です。本記事では、不正検知サービスの概要や導入のメリット、比較検討時のポイントについて解説しました。
不正行為からの被害を最小限に抑えるためには、コスト・機能・サポート体制といった比較ポイントを押さえ、自社に最適なサービスを選定することが重要です。また、サービス導入によって得られる安全性と信頼性が、最終的に企業の成長につながります。
本記事を参考に、不正検知サービスの導入を検討し、自社にとってベストな選択肢を見つけるための第一歩を踏み出してください。
当社のグループ会社であるスクデットでは、おすすめ6選でも紹介した「sift」と「ReD Shield」を提供しています。
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- 決済・不正対策