繁華街・主要駅・商業施設など人が集まりやすい場所に突如として現れたと思ったら、数日ですぐに消えてしまう店舗を見たことがありませんか。このような店舗は「ポップアップストア」と呼ばれており、意図的に期間限定・短期間出店が行われている店舗です。
当記事では、ポップアップストアの概要・出店目的から、出店メリット・デメリット、出店場所と選び方まで幅広くご紹介しています。
ポップアップストアの出店を成功させるポイントや、効果測定の方法についてもご紹介しているため、ポップアップストアについて気になっている方や出店を検討している方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
ポップアップストアとは
ポップアップストアとは、数週間程度の期間限定で出店される店舗のことです。英語で「突然現れる」という意味を持つ「Pop Up」にちなんでこのように呼ばれています。
名称の通り商業施設・駅構内・レンタルスペースなどに突如として出現するのが特徴で、ブランドの新商品発表・プロモーション・販売促進などさまざまな目的で出店されます。
近年では日本国内でもポップアップストアの出店事例が増えていますが、その理由のひとつにはD2Cブランドが増えたことが挙げられます。オンラインのみでのプロモーション・販促施策だけでなく、顧客とのリアルなコミュニケーションの場としてポップアップストアを活用するケースが多く見られるようになってきています。
ポップアップストア出店の目的
期間限定で出店されるポップアップストアは、売上の確保という点では非効率です。にも関わらず企業がポップアップストアを積極的に出店する理由は、経営上の明確な目的があるためです。
ここでは、企業がポップアップストアを出店する主な目的についてご紹介します。
新商品のプロモーション
ポップアップストアを出店する主な目的のひとつが、新商品のプロモーションです。目立つ場所に突如として現れるポップアップストアは、話題性・注目度が非常に高いという特性を持つため、新商品のプロモーションを行うのに非常に適しています。期間限定店舗という特性上、メディアに取り上げられやすいというメリットも活かすことができます。
近年ではオンラインでの商品プロモーションが主流となっていますが、実際の商品を手に取って魅力を感じてもらいたい場合のオフライン施策としてポップアップストアが活用されています。
認知拡大
ポップアップストアは、プロモーションに適しているだけでなく、ブランドや商品の認知拡大にも適しています。
その注目度・話題性の高さからバイラルマーケティングとの相性が非常に高く、ポップアップストアの店舗に集まった人々からの口コミ拡散やSNS投稿の拡散といった効果を得ることが可能です。拡散された情報からポップアップストアに訪れる顧客も増えるため、さらなる口コミ・SNS拡散を招くという相乗効果も期待できます。
認知拡大目的でポップアップストアを出店する場合は、店舗だけでなくオンラインのコンテンツ提供にも注力を行い、情報拡散力や施策の成功率をいかに高めるかがポイントとなります。
テストマーケティング
ポップアップストアは、効果測定を行いやすい特徴があり、テストマーケティング目的で出店されることも多くあります。
ポップアップストアは来店者数・メディアでの反響・検索数といった定量的な目標を立てやすく、出店前と出店後でのデータ推移を分析することで、出店による販促効果や認知度を計測することも可能です。
ポップアップストアで実施したテストマーケティングから得られたデータは、今後のビジネス戦略に活用することができます。
在庫処分
ポップアップストアはその注目度や話題性を活かして、販売目的で出店されることもあります。新商品や主力商品を販売するケースもある一方、キャンペーンやセールを開催して在庫処分を行うケースもあります。
販売目的で出店する場合は、プロモーションや認知拡大での出店とは異なり、売れる場所へ出店することや、利益がでるように出店コストを抑えること、ある程度まとまった出店期間を確保することがポイントとなります。
ポップアップストアを展開するメリット
ポップアップストアは、主に企業のマーケティング目的で出店されることについてご紹介しました。ここでは、ポップアップストアを展開することで得られるマーケティング上のメリットについてご紹介します。
具体的にどのようなメリットが得られるのかを把握しておきましょう。
話題性が生まれる
ポップアップストアの代表的なメリットは、期間限定出店という希少性・イベント性・アミューズメント性から人々の話題を集めやすいことです。ブランドイメージを前面に押し出した店舗展開が行われることからメディアやSNSにも取り上げられやすく、情報の拡散が期待できます。
ポップアップストアはその話題性の高さから、プロモーション・認知拡大といった目的で出店されるケースが多くあります。
顧客との関係づくり
オフラインで出店するポップアップストアは、顧客と直接コミュニケーションを取ることができるため、顧客との信頼関係構築やファン獲得に繋げることができるメリットもあります。
近年では消費者の購買行動はオンライン寄りとなりつつありますが、ECサイトではコミュニケーションを行う機会が限定的となることがネックです。特に、ECサイト専業の事業者においてその傾向は顕著となります。
ポップアップストアを出店して顧客との関係性を強化できることは、顧客体験・顧客ロイヤリティが重視される現代のビジネスシーンにおいて大きなメリットと言えるでしょう。
販売チャネルの創出
近年ではオンライン・オフラインの複数のチャネルを統合したオムニチャネルやOMOがビジネスにおいて主流となっています。プロモーションや認知拡大の側面が強いポップアップストアですが、チャネルのひとつとして機能できることも大きなメリットです。
ポップアップストアは出店・撤退が容易に行えるため、繁忙期やシーズン商品の販売に、一時的なチャネルとしてポップアップストアを活用することは非常に効果的でしょう。
特に、EC業界・飲食業界・音楽業界においては、ポップアップストアを販売チャネルの創出に活用する事例が多く見られます。
ポップアップストアのデメリットとは
ポップアップストアは、先にご紹介した通りマーケティング面・プロモーション面におけるさまざまなメリットがあります。しかし、期間限定出店の仮店舗であるが故のデメリットも存在します。
ここでは、ポップアップストアを展開するデメリットについて解説します。
さまざまなコストがかかる
ポップアップストアの代表的なデメリットは、コストがかさむことです。物件を借りるコスト・人件費・内装にかかるコスト・商品を配送するコスト・集客コスト・プロモーションコスト・売上に係るロイヤリティなどさまざまなコストが必要となります。
コストパフォーマンスの面では通常店舗よりも大幅に悪化することは避けられず、同時に店舗設営や運営に要する労力も多く必要となります。
このようにポップアップストアの出店にはコスト面のデメリットが伴うため、出店する際にはあらかじめデメリットの影響力・影響範囲を計算に入れておくことが重要です。
ポップアップストアのプロモーション方法
ポップアップストアを出店してマーケティングに活かすのであれば、単に出店するだけではなくプロモーションを行って積極的に集客を行う必要があります。
ここでは、ポップアップストアに適したプロモーション方法についてご紹介します。ポップアップストアの出店を検討している方は、プロモーション方法についても併せて把握しておきましょう。
メディア掲載やインフルエンサーによる拡散
ポップアップストアを出店する際には、メディア掲載やインフルエンサー起用により、積極的に店舗の存在や魅力をアピールしていくことがプロモーションの基本戦略です。通りすがりの人のみに露出するよりも、効率的・効果的に話題を集めることができます。
その際、メディア掲載されやすくするために、事前にイベント・キャンペーンの告知を行ったり、インフルエンサーにベネフィットを提供して協力を仰ぐことがポイントとなります。
ポップアップストアを出店しても、待ちの姿勢では大きな成果は見込めません。自ら話題を集められるように、主体的に周囲を巻き込んでアクションを起こしていきましょう。
SNSでの話題作り
SNSが持つ情報拡散力は非常に大きくユーザー数も非常に多いため、ポップアップストアのプロモーション・口コミ拡散においても、SNSをいかに上手く活用するかが鍵となります。
そのため、来店者によるSNSでの口コミの自然拡散を期待するだけでなく、自社SNSでの積極的なコンテンツ投稿を行ったり、写真や動画を撮影したくなるような店舗づくりを行ったりといった、ストアが話題になるような工夫を行うことがポイントとなります。
ポップアップストア出店前の事前準備の段階から話題作りに取り組むだけでなく、出店後にもスムーズに情報・口コミが拡散するような取り組みを行いましょう。
ポップアップストアの効果測定方法
ポップアップストアの効果測定方法は、一般的なビジネスの効果測定と同じく、各指標を用いて数値で計測を行います。出店する場合には、まずは事前に次の指標の設定を行っておきましょう。
KGI(Key Goal Indicator):重要目標達成指標
ポップアップストア出店の目的・ゴールを示す数値。一般的なビジネスの場合は売上を設定するのが一般的ですが、ポップアップストアの場合は認知度拡大など目的によって異なります。
KPI(Key Performance Indicator):重要業績評価指標
ポップアップストア出店の目的・ゴールの達成度合いを計測する中間指標。
上記指標に対して、売上・来店者数・購入率・購入数・ブランド認知度・オンラインからのリード獲得といったポップアップストアの評価指標を出店目的に応じて設定していきます。
販売指標に関してはさらに細かく細分化を行い、日別売上・顧客売上・製品別売上等の指標を設定しておきます。
出店後は常に設定した指標の計測を行い、出店が完了した後は収集したデータを分析・検証して今後のビジネスや再度のポップアップストア出店に役立てます。
ポップアップストアは出店場所が重要
ポップアップストアで効果的なマーケティング・プロモーションを行うためには、出店する場所選びが最も重要なポイントとなります。出店場所によって集まる客層や集客率が大きく異なるためです。
ここでは、ポップアップストアの出店場所として推奨されるスペースの例と、出店場所の選び方についてご紹介します。
よく使われるスペースの例
ポップアップストアで良く使われるスペースには、次のようなものがあります。それぞれの出店スペースによって特性が大きく異なるため、それぞれの違いを把握しておきましょう。
レンタルスペース
ポップアップストアの出店スペースとして最も活用されているのがレンタルスペースです。
近年ではオシャレで立地も良いレンタルスペースがいたるところに点在しており、内装の自由度も高いため、ブランドの雰囲気を演出しやすいのが特徴です。利用手続きも比較的簡便であるため、スムーズにポップアップストアを出店することができます。
レンタルスペースはポップアップストアに適した条件が揃っており、意図した通りの出店を行いやすいのが最大のメリットです。ポップアップストアを出店する際には優先的に検討したい方法と言えます。
商業施設内
ポップアップストアの出店にあたって集客力の高さを重視したい場合や幅広い顧客層にリーチしたい場合は、百貨店やショッピングモールといった商業施設内のスペースへの出店がおすすめです。
商業施設自体が有する集客力の高さや購買欲求の高さを活かすことができるため、プロモーション・認知拡大はもちろん販売目的での出店にも適しています。売上額に応じたロイヤリティを設定している施設が多いため、ポップアップストア出店に伴うコスト面のリスクを低減することも可能です。
ただし、商業施設内への出店は利用規約が厳しいため、出店のハードルが高いことや事前準備に労力を要することには留意しておく必要があります。
空き店舗
空き店舗(貸店舗)を借りて、テナントとしてポップアップストアを出店する方法もあります。
テナント料や内装の費用は必要となりますが、本格的な店舗を構築することができるため、短期的なプロモーションではなく販売目的の比較的長期的な出店を行いたい場合におすすめです。
空き店舗の利用はハードルが高いと思われるかもしれませんが、近年では短期利用向けの貸店舗を取り扱う業者も増えており、選択肢が増えているようです。
ポップイン
ポップインとは、店舗の中にある店舗という意味で、カフェ・サロン・既存ショップの一部スペースを間借りしてポップアップストアを出店することを指します。
使えるスペースが限られることや自由な内装を行えないという制限はありますが、間借りするショップと親和性の高いアイテムを扱う場合やサイズが小さいアイテムを少数扱う場合には適していると言えるでしょう。
間借りするショップがレジ対応等を協力してくれる場合は、ポップアップストアに要する人員が少なくて済むというメリットもあります。
移動式
移動式とは、主にトラックなどの車両をカスタマイズしてポップアップストアとして出店するスタイルです。特定のスペースの出店とは異なり、一度ストアを構築しておけばいつでもどこでもポップアップストアを展開できるという機動力の高さが特徴です。
ターゲット顧客が集まる時間・場所を狙って出店することができるため、効率的にプロモーションや販売を行えるというメリットもあります。
近年では移動式のポップアップストアも増えてきており、洋服や雑貨を販売する移動型店舗であるファッショントラックや、食品の調理設備を備えた移動販売車であるキッチンカーといったストアが多く見られるようになってきています。
場所選びのポイントとは
ポップアップストアは注目度・話題性が重要視されるため、いかなる目的で出店する場合においても基本的には人通りが多い場所や人が集まる場所に出店することが前提条件となります。そのうえで、ブランドに合った客層が集まる場所・競合店の位置・出店目的(販売かプロモーションか)といった諸条件を加味しながら出店場所を絞り込んでいきます。
出店場所を選んだら、先にご紹介したどの出店スペースを利用するかを決めて、コストパフォーマンスが最も優れた方法を選択するのがおすすめです。
ポップアップストアの成否は場所選びに掛かっているといっても過言ではないため、店舗設営・店舗運営に注力する以上に場所選びには徹底的にこだわりましょう。
コロナ禍で起きたポップアップストアの変化
コロナ禍により人々の消費行動が大きく変化したと同時に、店舗型ビジネスにおいても安全性・利便性を追求するなどさまざまな変化が見られました。
オフラインで展開するポップアップストアについても例外ではないため、ここではコロナ禍でのポップアップストアに起こった変化と今後の展望についてご紹介します。
EC商品の受け取り店舗として活用
消費行動がオンライン寄りになりつつあることや、安全性・利便性が高いことから、ポップアップストアを出店する際には、EC商品の受け取り店舗として活用することも今後検討する必要があるでしょう。
非接触型決済(電子決済)の充実
店舗型ビジネスでは、現金に触れずに決済できる電子決済が急速に普及しました。安全性・衛生面を考慮してポップアップストアにおいても非接触決済の充実が求められるでしょう。
予約制による来店制限
海外では、密を避けるために予約制を取り入れ、店内の人数をセーブしている取り組みが見られるようになりました。
まとめ
期間限定で出店するポップアップストアは、イベント性・アミューズメント性・希少性の高さから話題を集めやすく、商品販売だけでなくプロモーションや認知向上に活用できるのが特徴です。通常の店舗よりもテストマーケティングや効果測定も行いやすいため、マーケティング戦略・ビジネス戦略のデータ収集にも役立てることができます。
また、人を集めやすいことや直接コミュニケーションを取れることから顧客との関係性構築にも適しており、EC事業者のブランディング・認知拡大・ロイヤリティ醸成の施策にも活用することが可能です。
オムニチャネル展開を行っているEC事業者の方や、EC専業事業者の方は、この機会にポップアップストアの出店を検討してみてはいかがでしょうか。弊社では、ECサイトの売上アップに繋がる顧客体験向上施策に関する資料も提供しているため、ぜひこちらもご活用下さい。
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