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ECサイトリニューアルの実践ガイド | 売上アップを実現する手順・注意点を解説

作成者: 株式会社DGコマース|2023.11.08

「ECサイトの売上をもっと伸ばしたい」
「数年前に構築したきり手を入れていないためデザインが古い」
「顧客体験を一元化するためにオムニチャネル化したい」

こうした理由からECサイトリニューアルに取り組む企業は少なくありません。しかし、リニューアルすれば必ず売上や流入数が伸びるかというと、そうではないケースが多いのも事実です。

その原因のほとんどは、ECサイトのリニューアルにあたって注意すべきポイントを知れば回避できるものです。「なんとなく古臭いのでデザインを刷新したい」という理由だけでリニューアルに取り組んでも必ず失敗します。

そこで本記事では、ECサイトのリニューアルを成功させるためのポイントについてご紹介します。
また、ECサイト構築に関する基本をまとめた無料資料をご用意しております。
こちらもぜひご覧ください。
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 関連記事:ECサイト構築を徹底解説!費用相場・方法・制作手順から会社の選び方まで

ECサイトをリニューアルする目的と適切なタイミング

ECサイトをリニューアルする主な目的は「売上の最大化」で、売上の向上と顧客満足度の向上を目指すために欠かせない施策です。
ですが、コストも労力もかかるので気軽にはリニューアルできません。適切なタイミングを見計らってリニューアルを行う必要があります。
売上拡大のためのリニューアルを考えるべき具体的なタイミングを以下にご紹介します。

1. システムの老朽化

古いシステムとなってくると、最新のサービスを組み込めなかったり、セキュリティのリスクがあったり、ページ表示のパフォーマンスが悪かったり、ちょっとした改修も大がかりになってしまったり、運営上いろいろな問題が顕在化してきます。もちろん適切なシステムアップデートを行うことで長く運用するケースもありますが、こうした問題を放置していては売上への負の影響が避けられません
そして老朽化の問題は放置していても解決されることはありません。

システムの老朽化による問題が見られる場合は、速やかにリニューアルを検討しましょう。

2. 機能の不足

ECサイトの機能を大きく2つに分けると、お客様の購入を促進する機能(注文してもらうまでの機能)と受注処理や発送を効率的に行うための機能(注文してもらった後の機能)に分けられます。
前者はお客さまやデバイスのトレンドに合わせて柔軟に対応をし続ける必要がありますし、後者はビジネスの拡大に応じてさまざまなケースに対応できる必要があるため、導入した当時のままでは機能が不足してくることがあります。

ユーザーに最適な購入体験を提供するためには検索機能の強化やSNSとの連携、ページ表示最適化など様々な機能が求められますし、適切なタイミングでオファーするためのマーケティングオートメーション機能も求められますし、出荷業務を効率化するための各種システムとの連携など、必要な機能は状況によって異なってきます

機能不足が顕著な場合、リニューアルを通じて機能を追加し、顧客満足を向上させるべきです。

3. スマホファーストでない(デザインが古い)

スマホユーザーが増加する中、スマホファーストのデザインは極めて重要です。
単にスマホ用のデザインが存在しているだけでは不十分で、スマホでの操作性を最優先したデザインである必要があります。
デザインが古く、スマホでの使い勝手が悪いECサイトは、リニューアルを通じてデザインを見直し、ユーザーに適切な情報を伝えやすくしましょう。
最新のデザイントレンドに沿うことで、より多くの顧客に訴求することが可能になります。

4. パフォーマンスが悪い(表示が遅い)

ウェブサイトの読み込み速度が遅いと、顧客はすぐに離れてしまいます
特にECサイトで商品ページや決済処理が遅いと、顧客は購入に二の足を踏むでしょう。
パフォーマンスを改善するには、まずは現状のパフォーマンスを評価し、問題の原因を特定する必要があります。パフォーマンスを改善する手段はデザインの最適化、システムとサーバーの改善、キャッシュやCDNの使用などさまざまありますが、システムに大きなボトルネックがある場合、システムのリニューアルを行う必要があります。
大量の注文をさばくことのできないシステムではビジネスの拡大を支えられません

5. セキュリティに課題がある

セキュリティに問題があると、顧客データや企業情報が漏洩し、信頼を失うリスクや法的な問題が発生する可能性があります。不正アクセスやデータ改ざん、顧客情報の流出は、重大なプライバシー侵害を招き、顧客の信頼を失います。セキュリティ対策の強化は事業の継続性と企業価値の保持のために不可欠です。そのためには定期的な脆弱性診断、パッチの適用、アクセス制限の見直し、そして従業員への教育が欠かせません。

脆弱性診断の結果大きなリスクが発見され、またその修正が困難な場合、システムのリニューアルをせざるをえないでしょう。またシステムが稼働するOSのバージョンがサポート終了してしまう場合も対応が必要です。

6. 運用コスト(ランニングコスト・保守コスト)が高い

可能な限り売り上げや利益を増やすための投資に回したいものの、ちょっとしたメンテナンスや運用に多くのコストやリソースが割かれてしまっているという現実があります。
運用コストが高いと事業の効率が低下し、利益への圧迫が起こります。システム保守や運用に過剰な人員や時間がかかる場合、コストだけでなく社内のリソースのムダが生じていることもあります。

そうした場合は、システムのリニューアルにより、最適化と効率化を目指しましょう。
固定費のような保守料金や運用のムダをなくすことで、ビジネスをさらに成長させることができます。

7. 事業拡大時

事業を拡大する際には、システムやサービスのスケーラビリティがキーとなります。
スケーラビリティが低い環境では先述したパフォーマンスの改善が難しいだけでなく、新規ビジネス参入に必要な柔軟性も確保することができません。
新規ビジネスには全く新しい別のECシステムを採用するという考え方もありますが、顧客基盤やバックオフィスなどが統合されていないと運用負荷が高く、ビジネス拡大のボトルネックとなってしまう場合があります。

ECサイトのリニューアルに向けて準備すべきこと

ECサイトのリニューアルを成功させるためには、事前の対策と準備が欠かせません
ですが、実際には十分な準備をせずスケジュール優先でリニューアルした結果、リニューアルの目的を達成できなかった、というケースは少なくありません。
ここでは、準備すべき具体的な内容をご紹介いたします。

1. リニューアルの目的の明確化と社内合意

リニューアルを行う最大の目的は何かを明確にすることが不可欠です。
当たり前のことではありますが、リニューアルプロジェクトを進めていく間に目的を見失い、方向性が定まらなくなるといったケースは少なくありません。

リニューアルの目的としては例えば売上の増加、運用の効率化などが挙げられます。
これらはKGIと設定され、このKGIを達成するためのKPIを定めるのですが、基本的にはこのKPIの達成について現行システムに課題があり、それを解決するためにシステムのリニューアルを行う、ということになります。KGIを達成できない原因がシステムにないのであれば、システムのリニューアルより前にその課題解決に着手すべきですね。

こうした目的の他に、「システムの保守が終了するから」「現行の保守を行っている会社が撤退するから」など仕方がない理由でリニューアルを行う場合もありますが、せっかくのリニューアルの機会ですので、ビジネスの成長を目的として検討できるのが望ましいでしょう。

こうした目的の設定、KGI・KPIの設定により、リニューアル効果の測定が容易になり、より効果的な施策が策定できます。ただしリニューアルの目的や方針は、リニューアルに関わるすべてのステークホルダーと合意しておく必要があります。経営者の考える方針とギャップがある状態ではいくら入念にリニューアルの検討を進めてもうまく進めることができません。
なんのために行うリニューアルなのか一致した状態でプロジェクトを進められるようにしましょう。

2. 現場の意見の取り入れ

リニューアルを成功に導くためには、現場の意見を聞き、それを取り入れることがカギです。
特に運用に関する改善を目的にリニューアルを行う場合、実際の運用を担当する現場からの詳細のヒアリングが欠かせません。
現場の社員や彼らが普段接している顧客からのフィードバックは、サイト改善のための貴重な情報源です。例えば、業務の効率化やユーザビリティの向上、マーケティング活動の検証と最適化などは現場の声を聞かずに実現することは難しいでしょう。

また極端な場合、現場の強固な反対によりリニューアルプロジェクト自体がとん挫する場合もあります。
これは先述したステークホルダーとの合意と通じるものもありますが、現場を無視した進め方をすると猛反発にあう場合もあります。
より良いものを目指す、現場の納得感も得るという2つの観点でヒアリングは行うべきでしょう。

3. リニューアルの範囲の明確化

ECビジネスは多くの場合、単独のシステムでは完結せず複数のシステムにわたって広範な業務を実現しています。
現行システムとシステムのスコープを変えずにそのままリニューアルする場合もありますが、そもそもリニューアルの目的を達成するという観点でそのままでいいのかは検討すべきです。
この範囲が決まらないことには、具体的な検討に入っていくことはできません。
変更する部分がデザインだけか、機能追加が必要か、はたまたシステムのセキュリティを強化すべきかで検討する内容は大きく異なります。

リニューアルの目的や現行サイトの課題に立ち返ったうえで、どこまでを対象とするかを検討しましょう。

4. 不可欠な機能と二次的機能(あったらいい機能)の明確化

リニューアル時には、欠かせない機能とそうでない機能をはっきりさせることが肝心です。
この区分けをしておかないと優先順位がわからなくなり、最適なコスト配分が実現できなくなります。
多くの場合検討を進めるうちに期待が大きくなるにつれ、あれもこれもとたくさんの希望を詰め込みがちになります。
優先順位がつけられていないと、たくさんの希望により膨らんだ見積金額を予算内に収める際、適切な判断ができなくなってしまいます

リニューアルの目的に即しているか、実現した場合の費用対効果は高そうかなどの観点で優先順位付けを行っておきましょう。

5. 予算とスケジュールの策定

制限のない予算とスケジュールで行えるプロジェクトはありません。
つまりECサイトのリニューアルプロジェクトも、予算とスケジュールといった制約条件下での成功を目指していくわけで、この制約条件は成功に大きく影響を与えます。
無謀な予算とスケジュールの場合、その段階で成功は難しいと言えます。

そのため適正な予算とスケジュールを設定する必要があるのですが、自社だけでの検討が難しい場合は提案企業に情報提供依頼するのも手です。
「おおよそこんなことを検討しているのだけど、過去の事例でどれくらいの費用と期間がかかったか」と聞いておくだけで、相場を大きく外れた無茶な制約条件になることを避けることができます。

もちろん社内の様々な事情に捻出できる予算やスケジュールは影響を受けるので、そういった影響を加味しつつ現実的なプランを考える必要があります

6. 適切な提案を得るための提案依頼書(RFP)の作成

最後に、ここまでの準備・検討を踏まえ、依頼したい内容をわかりやすくまとめた提案依頼書を作成します。せっかく綿密に検討したのに、提案依頼書で表現ができておらず依頼先にそれが伝わらなければ、適切な提案を受けることができません。

この提案依頼書作成で手を抜いてしまうと、その後大きく苦労することになります。
例えば、各社からの提案がバラバラな粒度で比較することができない、提案内容で比較することができないので金額で判断したが目的や実現したいことが伝わっておらず要件定義でとん挫した、といった失敗はいまだに繰り返されています。

なにを実現したいのか、なにを重視しているのか、なにを提案してほしいのか、それぞれ抜け漏れなく提案依頼としてまとめられることが理想ですが、ECサイトリニューアルのRFPを書き慣れているという人はあまりいないでしょう。

もし初めてRFPを書くという場合は、コンサルティング会社に支援を依頼するのもいいでしょう。
検討段階であまりコストはかけられないという場合は、基本的なRFPのフォーマットを参考にしたり、提案依頼予定の会社があればどのような情報が必要か相談してみるのもよいでしょう。

ECサイトリニューアルの手順と進め方について

リニューアルに向けての準備が済んだら、実際にリニューアルプロジェクトをスタートさせます。
リニューアルは基本的に、提案依頼、ベンダー選定、要件定義、開発、リリースという順番で進んでいきます。ここではそれぞれの手順の注意点と進め方のコツについてご紹介していきます。

リニューアルプロジェクトのチームを発足させる

ECサイトのリニューアルは大がかりなプロジェクトです。
広い範囲の業務に関連するため、一人の担当だけで完結することは基本的になく、それぞれの業務担当者の協力を仰ぎながらプロジェクトは進めていきます。
検討段階でプロジェクトチームが発足していればそのままスライドして実際のリニューアルについても同じメンバーで進むこともありますが、提案依頼書の作成までは主担当がメインで進めることも少なくなく、このタイミングで正式にプロジェクトチームを発足することもあります。

プロジェクトチーム内の役割は主に、全体を統括するプロジェクトオーナー、各業務領域を主担当者、情報システム担当者、などに分かれます。
プロジェクト期間中、専任として関われるメンバーは稀で、通常業務と並行してこのプロジェクトに関与することが多いため、担当範囲や稼働の調整を行っておくことが望ましいです。
業務担当に今週中に確認しなければならないのに全く回答が返ってこず、仕様が決められなくてスケジュールがどんどん遅延していく、なんてことはよくあります。
チーム内の役割分担だけでなく、社内の合意形成プロセスを明確にしておくことも重要です。

選定基準・選定プロセスを明確にする

リニューアルの準備として提案依頼書をまとめるに際しリニューアルの目的やKGIを定めるのですが、実際のリニューアルを依頼する企業を選定する基準が明確でなく、「担当者の印象がよかった」「金額が安かった」などリニューアルの目的とは関係のない基準で選定してしまう、といったことは本当によくあることです。
それでもうまくいけば結果オーライではあるのですが、整合性のない選択は失敗のリスクが高いと言えます。

金額、スケジュール、実績、体制などの一般的な評価項目だけでなく、リニューアルの目的を達成できる内容になっているかを目的や課題に応じた評価項目とし、重みづけを行った上で評価するとブレがない判断ができます。
また評価には個人のバイアスがかかりますので、複数人で評価を行うことでさらにブレを小さくすることができます。どうしても自分の担当領域の項目を重視してしまうものなので、それを踏まえた評価方法を決めておくとよいでしょう。
ただし、準備段階での社内合意が不十分だと、いくら現場側のプロジェクトチームが合理的に評価して選定しても鶴の一声でひっくり返ってしまうなんてこともおきます。
基準と合わせて決め方のプロセスも提案依頼前に決めておくのが大切です。

多くの場合、一次選考でプロジェクトチームで判断、二次選考として経営判断のようなプロセスを辿ります。意思決定のレイヤーが上に上がるほど、大きな項目での判断となる傾向があります。もちろん金額やスケジュールといった項目は重要なのですが、そもそもの目的は何で、その達成に対してどの選択が合理的であるかわかりやすく判断できる基準を作り、合意を得ておくことが重要です。

提案依頼先を選ぶ

たくさんの提案の中から最も優れた提案を選びたい、という気持ちにもなりますが、リニューアルの目的と合致しない提案になるだろうことが事前に判断できる企業とコミュニケーションはリソースの無駄になってしまいます。
提案依頼先企業とのコミュニケーションについては後述しますが、かなり重要です。
広く提案依頼した反面、1社あたりのコミュニケーションが減ってしまうと結果として期待にそぐわない提案ばかりになってしまう可能性があります。

準備段階で見えた大まかな目的や、予算やスケジュールなどの制約条件があれば、ある程度まで企業を絞り込むことができるはずです。もしその絞り込みも難しいという場合は、情報が足りていない段階ですので提案依頼の前に情報提供依頼をするとよいでしょう。2,3社と会話をすればどのようなところに声をかけるべきかおおよその検討がつくようになるはずです。

提案依頼は3~5社程度に行い1次選考、2社程度に絞り込み2次選考くらいが適切にコミュニケーションをとることができる数だと思います。あくまで一つの目安ですが、むやみやたらに候補に入れないことが重要です。

提案を依頼する

よい提案を受けるには、提案依頼書を送付して「はい、おしまい」というわけにはいきません。
どんなに入念に準備した細かな提案依頼書であっても、受け取った側から見たとき、わからないことは必ずあります。意図が伝わらなければ意味がありません。
もちろんこちら側は依頼主になるので行間を読み取ってほしいという期待があるのは自然なのですが、これから深い関係を構築していくという前段階ですので、丁寧なコミュニケーションが必要です。

場合によっては提案依頼先を招待し「RFP(提案依頼書)説明会」を開くのもよいでしょう。
一言一句読み合わせる必要はありませんが、提案依頼書の行間に込めた思いを依頼先にまとめて伝えることができるため、その後のコミュケーションを円滑にすることができます。

提案企業が実際の提案作成段階に入ってくると、細かい仕様や意図の確認が発生します。
複数社からたくさんの質問が来るとこれらのQA対応にもかなりのリソースが割かれます。同じ質問を複数社からもらうことを避けたい場合、QA表のフォーマットを作成したうえで、質問はそれぞれで受け付けるが、回答は全社に公開するという方法もあります。

企業によっては提案方針のレビューを依頼されることもあります。
実際の提案時に的外れな提案がないようにする調整は、提案する側とされる側両者にメリットがあります。
「プロなんだし、一発で出してよ」と思ってしまうかもしれませんが、提案企業はECサイトのプロであっても御社のプロではありませんので、良い提案を集めたいのなら、御社を良く知った上で提案したい企業からの申し出には応えるべきでしょう。
もちろんリソースの限界はあるので、対応できる範囲でというのが前提です。

もしなんの質問もなんのレビュー依頼もない場合、おそらく汎用的な提案が出てくるでしょう。
もちろんそれで御社の目的を達成できるのであれば問題ありませんが、提案時は熱心でなく、契約後に熱心になるというのは、その逆はあるかもしれませんが、一般的にはあまりないことです。
依頼先企業の選定に、長く取引するための企業としての姿勢や文化を評価するとしている場合、この段階でたくさんのものが見えてきます。
失敗を回避し、プロジェクトを成功させるためには、提案依頼書を出したあとのコミュニケーションも重要なのです。

ベンダーの選定を行う

選定の基準や評価の方法、そのプロセスが明確にできていて、かつ提案依頼段階でのコミュニケーションが十分にできている場合、選定はそこまで難しくはずなのですが、実際にはそう簡単にはいきません

例えば、Aという観点ではこっちがいいがBという観点ではあっちがいい、安くてそれなりなのはこっちだが高いけどもっといいのはあっち、みたいなことがおきます。
ドライに当初の選定基準に沿って判断することもできますが、自社の理想にもっと近づけるために各社に対して内容を調整する依頼を行うこともできます。

「この部分の機能は落としていいから、金額はもっと下げて欲しい」
「他社の提案にはここが入っているけど、御社は安い分入っていない。ここを入れるとどうなる?」
「御社の内容が一番いいけど、スケジュールが合わない。合う方法で提案を再検討してほしい」

このような調整や交渉を行うことで、本当に自社にマッチしそうな提案を引き出すことが期待できます。
より成功確率を高めるには、提案を依頼して終わり、出てきたものをパッと見て判断して終わり、ではなく最初の提案が出たあとも細かいコミュニケーションを行うことが重要です。
ただし、これを依頼した全社で行うことは非効率なので、候補を絞ったうえで行うとよいでしょう。

要件定義を行う

ベンダー選定を行い、いっしょに取り組む企業を決めたら、いよいよリニューアルシステムの開発プロジェクトのスタートです。
まず行うのは要件定義です。要件定義では作成するシステムでは何を作るかを決めていきます。
「何をつくってほしいかは提案依頼書にも書いてあるし、それを見て提案しているのでこのプロセスは不要では?」と思う方もいるかもしれませんが、ひとつひとつ細かく話ができている状態ではなく認識のギャップがある段階ですので、作り始める前にそのギャップをなくしていく大事な工程です。

要件定義では、機能要件だけでなく、パフォーマンスやセキュリティといった非機能要件も定義していきます。要件定義で重要なのは「定義」することです。ですので、要件定義に参加するメンバーは「定義」できるメンバーである必要があります。
業務に詳しくない、あるいは決める権限がないというメンバーでは定義することができず、あらゆる事項が持ち帰りになってしまいます。
こうした持ち帰りが多いとスケジュールを圧迫し、結果的に粗い要件定義となってしまいます。
要件定義が不十分なまま開発に移ってしまうと、あとで認識に齟齬が発覚し作り直しになり、スケジュールやコストを超過してしまう、というリスクがあります。
要件をスムーズに定義できるような体制を構築しておくことが重要です。

デザイン決定のプロセス

デザインは、ECサイト運営における重要な要素です。
商品の魅力を引き立てると同時に、ユーザーの購入プロセスをスムーズに導く役割を担っています。
デザインのトンマナなどはシステムの要件定義前に決めることができますが、要件定義や実際の画面や画面遷移が見えてくる基本設計が終わるまでは細かいデザインの要素を決めることができないため、基本的には基本設計後にデザイン決めを進めていくことになります。
ECサイトで必要は基本的な画面数はある程度決まっていますが、その画面に具体的にどのような要素を表示させる必要があるかが決まらないとデザインも決めることができません。

デザインについてはシステムの開発会社とは別のデザイン会社に依頼する場合もありますし、システム会社がデザイン部門を抱えている場合もあります。
お願いしたいデザイン会社が決まっている場合、システム開発を行う会社を交えて、どのような段取りで進めていくかを綿密に調整しておく必要があります。
システム実装の段階でデザインのコーディングが間に合っておらず進めない、納品されたデザインがシステムの仕様と合っていない、といったことを避けるためにそれぞれのスケジュールを整理しながら進める必要があります。

デザイン会社の選定においても、「ECサイトリニューアルのプロジェクトで開発会社と一緒に進めたことがあるか」を確認しておくよいかもしれません。

既存システムのリプレイス計画

新しいシステムを作るだけではリニューアルは完了しません。
既存システムとの入れ替え(リプレイス)を行う必要があります。
リプレイスでは主に以下のような準備作業を行います。

  1. データ移行の計画
  2. 運用テストの計画
  3. お客様(ユーザー)へのお知らせの計画

ECサイトのデータはお客様の個人情報を含みますので、移行については慎重に計画する必要があります。
できるだけ個人情報そのものを扱う担当は絞った方がリスクが少なくて済むので、旧システムからのデータの出力と新システムが稼働する環境への複製の作業自体はお客様自身が行い、その後新システム環境への移行はシステム会社で行う、といったような作業分担を検討しましょう。

新しいシステムに切り替わると、これまでと業務オペレーションが変わりますので、問題なく想定通りの業務が回るかをテストしておく必要があります。
ECサイトリニューアルの場合、システムの特性上旧システムと新システムを並行で運用はできないため、事前にできるだけ運用に関する問題点をつぶしていきます。

また、さまざまなシステムと連携する場合、業務はシステム連携がされていないと回りませんので、システム連携についても問題がないかをテストする必要があります。
連携先のシステムとテストする必要があるため、タイミングや環境を整えておく必要があります。
このようなテストを問題なく進められるよう、しっかり計画をしておく必要があります。

お客様へのお知らせも重要です。
旧システムにログインするパスワードは通常不可逆な方式で暗号化されて保存されているため、お客様が新システムを新しく利用するにはパスワードを再設定してもらう必要があります。
また、システム切り替えには一定の時間が必要なためサービスが利用できない時間帯があることなどを事前にお知らせします。
どのタイミングで、どれくらいの期間、どのようにお知らせするかを計画し、お客様が混乱することなくリニューアルできるようにしましょう。

リニューアル後の運営と売上向上のための戦略

リニューアルの目的が達成できているかは、検討の際に設定したKGIとKPIで評価します。
リニューアルの目的を達成した後は、ビジネスの目的である売上拡大および利益拡大を目指していくことになると思います。

売上拡大と利益拡大は、マーケティング戦略と運用の効率化がカギを握ります。

マーケティング戦略の見直しと測定

リニューアルはマーケティング戦略を見直すよいきっかけです。
適切なデータ分析を通じ、改善点を的確に把握することで、効果的な戦略を展開することができます。
売上改善のために分析すべき指標には以下のようなものがあります。

  • 売上
  • 利益
  • アクセス数
  • 直帰率
  • 離脱率
  • 会員数
  • コンバージョン率
  • リピート率
  • 客単価
  • LTV
  • ユーザー属性
  • CPA
  • ROAS
  • ROI

これらの指標を分析し、ボトルネックを発見し改善することで売上の改善を目指すことができます。

アクセス分析ツールや各種マーケティングツールについている分析の機能、BIツールなどを活用し、リアルタイムにこれらの指標をモニタリングできる環境が理想です。

運用効率化

売上拡大には効率的な運営が欠かせません。
売上が2倍にするにあたって人員が2倍以上必要となると、業務効率が落ちているということになります。
現場のオペレーションの改善はもちろん行うのですが、それだけでは限界がありますし、人手不足の環境で属人性を高めることになってしまうので、できるだけ仕組みで解決することが望ましいです。

出荷周りのシステム化が不十分であれば見直す必要がありますし、倉庫や倉庫のロケーションの問題であれば倉庫の見直しをする必要があります。
3PLを利用することも検討しましょう。

ECサイトの売上拡大については、以下の記事でも詳しくご案内しています。
【解説】ECサイトの売上拡大に必要な4つのポイント

ECサイトのリニューアルの際考慮しておくべきポイント

リニューアルの目的を達成することが一番重要なのですが、基本的なポイントを押さえておくことも忘れてはなりません。
ここでは、リニューアルの際考慮しておくべきポイントについてご紹介します。

サイトマップの見直しをする

課題を踏まえた上で「どのようなECサイトを目指すのか」を描くためにサイトマップを見直します。サイトマップがしっかりと作成されていることで、より具体的な見積もりと納期を知ることができるので、リニューアルを円滑に進めるためにも必要です。

レスポンシブデザインを検討する

レスポンシブデザインとは、PCだけでなく複数のデバイスの表示に対応したECサイトのデザインです。今やインターネット利用者数はPCよりもスマートフォンが上回っている状態なので、スマートフォンからの流入を確保するためにも、レスポンシブデザインを積極的に検討しましょう。また、独自のデバイスネイティブなアプリケーションなども場合によっては検討するようにします。

商品カテゴリの設計を見直す

アクセス解析を用いて流入キーワードを分析し、それに応じて商品カテゴリの設計を見直すと、効率良くアクセスを集めることができます。異なるキーワードからでも、顧客が欲しいものを表示できるように設計するのことがポイントです。

口コミの掲載や権威づけをする

「使ってみて、その良さを実感しました」「使って1週間で効果が出ました」など実際に購入したユーザーが具体的なメリットを説明している口コミを表示するようにしましょう。専門家や研究機関による権威づけを行うことも効果的です。

コンテンツSEOを検討する

コンテンツSEOとは、ブログコンテンツなどによってECサイトのSEO価値を高め、ブラウザで検索結果の上位に表示させ、コンテンツからの直接流入を狙うための施策です。ECサイトマーケティングとしては、今や当たり前のように導入されています。

UXを意識したサイトデザインにする

UX(ユーザエクスペリエンス)とは「顧客体験」を意味し、ECサイトを利用した顧客が何を感じたのかに焦点を当てる概念です。顧客の立場に立ってECサイトを見つめ直せば、何が使いづらいのか、というUXを意識したサイトデザインを考えることができます。

将来のトラフィック拡大を予測する

ECサイトリニューアルに成功し、かつ継続的な改善を加えていけば自然とトラフィックが拡大します。こうした将来の拡大を予測した上で、ECサイトのインフラを見つめ直しましょう。

リダイレクトを設定する

ECサイトリニューアル後にアクセス数が減る原因として、リダイレクトを設定していないという理由が考えられます。旧ECサイトやコンテンツを表示してしまったユーザーが、リニューアル後のECサイトへアクセスできるようリダイレクトを正確に設定しましょう。

グロースドリブンデザインにする

グロースドリブンデザインとは、完成度100を目指すのではなく、早々にECサイトを公開し、効果検証を繰り返していくことで最適なECサイトを目指すというリニューアル方法です。グロースドリブンデザインを取り入れることで、効率良くECサイトを改善できるようになります。その場合には解析データを確認しながら細かいWebサイトの改善をリアルタイムで実施していく必要があるため、ECサイト構築パッケージのソースコードが公開されていて開発を内製化できていることが望ましいです。

デジタル広告やLPの見直しをする

現状として売上が伸びない場合、ECサイトだけでなくデジタル広告((リスティングやSNS)やLP(ランディングページ)に原因があることも考えると良いでしょう。ECサイトリニューアルと同時に見直すと、高い相乗効果を生み出すことができます。

構成変更とSEOのバランスをとる

ECサイトリニューアルによってサイトマップやサイトデザインが変更されると、SEOに支障をきたす場合があります。現状のSEO評価が下がり過ぎてしまうとリニューアルの意味が無くなってしまうので、SEOとのバランスを考慮しつつ構成変更を行いましょう。

ペルソナを取り入れる

ペルソナとはECサイトに取り込みたい具体的な顧客像です。今までは「20~30代の家庭を持つビジネスパーソン」など漠然としていたターゲット(セグメント)も、ペルソナでは「33歳男性、中小企業勤務、家族構成は妻と小学生の子供、休日は家族で過ごすことが安らぎ、etc」といったように、かなり詳細までターゲット像を絞り込みます。こうすることで、より的確なマーケティングを展開でき、効率良く集客することが可能です。

カスタマージャーニーマップをつくる

カスタマージャーニーマップとは、ECサイトとユーザーの接点をマッピングしたものです。ユーザーが自社ECサイトに出会うまで、出会ってからの行動、さらに購入に至るまでをマップ化することで、ユーザーとの接点を把握することができます。それに沿ってECサイトデザインを設計し、効率良く利益率をアップさせていきます。通常はペルソナと併用します。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
目的を達成するECサイトリニューアルは簡単ではありませんが、ビジネスを成長させるには避けて通れません。押さえるべきポイントを押さえ、しっかり進めれば失敗のリスクを小さくすることができますので、ぜひ本記事の内容を参考にリニューアルに取り組んでいただければと思います。

弊社ではECサイト構築に関するお役立ち資料を数多くご提供しております。
ECサイトの基本から学びなおしたいという方向けの資料もご用意しておりますので、ぜひこちらの資料もご覧ください。