ECとは Electronic Commerceの略です。日本語では電子商取引を意味し、インターネットを媒体に商品やサービスの提供を行うビジネスを指します。インターネットで物品の販売を行う通販サイトをはじめ、オークションサイトや旅行代理店もECに含まれます。
日本国内におけるECの市場規模は急速に拡大しており、経済産業省が発表した国内電子商取引市場規模の調査情報によれば、2023年の国内におけるEC市場規模は24.8兆円に達しました。今後も、ECの市場規模は拡大していくものと考えられます。
(参照:経済産業省「令和5年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」)
通販とは通信販売のことです。電話やファックス、メールなど、通信手段を用いて商品やサービスの販売を行うビジネスモデルの総称です。たとえば、テレビで商品を紹介して販売するテレビショッピングも通販に含まれます。
結論からいえば、ECと通販に大きな違いはありませんが、通販にはカタログ通販やテレビショッピングなどのほか、インターネット通販も含まれます。つまり、ECサイト(ネットショップ)で行う商品やサービスの販売も、通販のひとつと考えられるのです。
「D2C」という言葉も最近よく聞くようになったが、ECとの違いが分からないという方もるかもしれません。D2Cとは、Direct to consumerの略です。代理店や小売店を挟まず、顧客と直接取引を行うビジネスモデルを指します。近年では、アパレルやコスメ業界など、さまざまな業界がD2Cに力を入れています。
D2Cでは、従来のように代理店や小売店を介しません。卸売業者も介在しないため、メーカーは中間コストを削減できるメリットがあります。また、消費者とのコミュニケーションも活発に行えるため、感想や意見を商品へ反映させやすいのもメリットといえるでしょう。
ECとD2Cの違いですが、前者がインターネットを介した取引を指すのに対し、後者は企業が製品の製造から販売を一貫して行うビジネスモデルのことを指します。D2Cは実店舗を構える場合もありますが、販売手法としてはもちろんECが多く活用されています。SNSやホームページなどを活用したブランディングを行いつつ、顧客へ商品やサービスを直接的に販売します。
ここで近年のEC市場における最新トレンドについてご紹介します。ECサイトを通じてネット通販事業に参入したい場合、以下で紹介するトレンドはぜひ押さえておくべき重要なポイントです。
現在はあらゆる事業においてデジタルマーケティングが重要視されています。特にネット通販事業では、顧客とのエンゲージメントを強め、LTV(顧客生涯価値)を向上させるために、デジタルマーケティングの活用が不可欠です。自社サイトへの集客から始まり、その後いかに顧客にファンになってもらい、長期的に価値を提供するかが重要な課題です。
スマートフォンの普及により、取引はますますモバイル端末で完結するようになり、各デバイスに最適化された広告やデジタルプロモーションの施策が必要となっています。その際に注目されているのが“One to Oneマーケティング”です。このアプローチでは、不特定多数の消費者に広告を展開するのではなく、特定の属性や行動を持つ消費者をターゲットにしたマーケティングを行うことで、集客力やコンバージョン率の向上を図ります。
デジタルマーケティング技術や顧客データプラットフォームの進化により、ターゲット層に合わせた広告表示やランディングページのカスタマイズが容易に行えるようになっています。たとえば、東京都内在住の30代女性など特定の属性を持つターゲットに対して最適化された広告を展開することで、より高い効果が期待できます。ターゲットに合わせたコンテンツや導線を準備し、より購買行動に結びつけることが求められます。
従来は、サイトへの集客の多くを広告に頼っていましたが、競争の激化に伴い広告費用が高騰しています。これに対して、コンテンツマーケティングは、低コストで中長期的に見込み顧客にアプローチする手法として活用されています。
SEOを意識し、顧客が抱える課題やニーズに応えるコンテンツを提供することで、検索を通じて潜在顧客が自社サイトにたどり着くようにします。この方法は即効性こそ低いものの、ブランドのファンを獲得し、中長期的なリレーションを構築するのに最適です。
越境ECとは海外市場に向けて展開するネット通販事業のことです。特に中国向けの販売を行おうとする動きが活発でしたが、関税の問題やGoogleが使えないなどの環境により、現在では落ち着きつつあります。しかしながら、世界中を市場とすることができる越境ECに魅力があることには変わりないでしょう。
経済産業省の報告書※2によると、日本の越境EC市場は米国で7,128億円、中国で1兆2,978億円もあることが分かります。こうしてデータとしてみても、それぞれの市場規模は無視できないほど大きいことがわかります。そのため、米国または中国など、それぞれの市場特性を理解してターゲットした越境ECを展開すれば、ネット通販事業の売り上げを大幅に伸ばすことができるかもしれません。
越境ECとは、海外市場に向けて展開するネット通販事業のことです。特に中国向けの販売が盛んでしたが、関税や国ごとの規制、技術的な制約(例:Googleの利用制限など)により一部で難しい状況が続いています。しかしながら、越境ECの魅力は依然として高く、特にアジアや北米などの市場を対象とするビジネス機会は豊富です。
経済産業省の調査結果によると、2023年の日本の越境EC市場は米国で1兆4,798億円、中国で2兆4,301億円に達しています。このように各国の市場規模は非常に大きく、それぞれの市場の特性を理解してターゲットにすることで、売上の大幅な拡大を見込むことができます。
EC市場においてもAIの活用が進んでおり、特にレコメンド機能の精度向上に寄与しています。従来のレコメンドアルゴリズムに加え、AIを活用することでユーザーの行動パターンを学習し、よりパーソナライズされた商品提案が可能となります。
また、チャットボットを活用したカスタマーサポートの自動化や、生成AIによる商品説明の自動生成など、最新のAI技術がECのさまざまな場面で利用されています。これにより、顧客体験の向上と効率化が実現し、競争力の向上につながっています。
ECサイトの構築により、どのようなメリットを得られるのかはもっとも気になるところでしょう。いくつものメリットがあるのは事実ですが、デメリットがあることも覚えておく必要があります。以下、代表的なメリットとデメリットについてまとめました。
自社でECサイトを構築する最大のメリットは、独自のブランディングを自由に行える点です。Amazonや楽天といった大手ECモールに出店することで手軽に運営は可能ですが、ルールや制限が多く、自由度が限られています。たとえば、写真の掲載数やページデザインの制約により、企業のオリジナリティを完全には表現できません。
一方、自社で構築する場合、こうした制限はありません。自社のカラーやコンセプトを最大限に表現し、自由にサイトデザインをカスタマイズすることで、ブランドの個性を存分に打ち出すことができます。
関連記事:モール型ECサイトとは?メリットとデメリット、種類や自社ECとの違いを解説
商圏を広げられるのもメリットといえるでしょう。実店舗販売では商圏が物理的に限定されてしまうため、商品を必要としている顧客が近くに店舗がないことで購入を諦める場合もあります。ECサイトを活用すれば、日本全国さらには世界中の顧客にアクセス可能になり、商圏の広がりが期待できます。
ECサイトの強みとして、顧客のデジタル情報を蓄積・活用できる点があります。たとえば、購入履歴の解析を通じて最適な商品をリコメンドしたり、メルマガで新商品やキャンペーン情報を案内することで、顧客との関係性を強化し、再購入を促すことが可能です。
ECサイトでは価格競争が非常に激しくなることがあります。インターネットの普及により、消費者はさまざまなECサイトを簡単に比較し、より安い価格を探す傾向があります。自社で1,200円で販売している商品が他のサイトで1,000円の場合、どうしても消費者は安い方を選んでしまいます。この結果、価格競争に巻き込まれ、利益率の低下が避けられないこともあります。
ECサイトの立ち上げ自体は比較的簡単に行えますが、安定して利益を出せるまでには相応の時間がかかります。特に、商品の認知度を上げ、顧客を獲得するにはさまざまなマーケティングのノウハウが必要です。しばらくは売上が安定しない期間が続く可能性があり、この間に適切な対策を講じなければなりません。
ECサイトを効果的に運営するためには、SEOやSNSの活用が不可欠です。しかし、これらを効果的に使うためには専門的な知識と戦略が必要であり、経験がなければ十分な成果を得ることは難しいでしょう。そのため、SEOやSNSマーケティングの知識を持つスタッフや外部の専門家のサポートが求められます。
ECサイトでは対面でのやり取りがないため、顧客とのコミュニケーションが難しいという側面があります。顧客のニーズや疑問に対してすぐに対応できない場合、顧客満足度の低下や機会損失につながる可能性があるため、チャットボットやFAQページの整備など、デジタルでのコミュニケーション手段を充実させる必要があります。
ECサイトを構築する際には、どのような機能を実装する必要があるのか、そしてサイト運営に不可欠な業務には何があるのかを理解することが重要です。ここでは、ECサイトに必要な基礎的な機能と運営における必須の業務について解説します。
ショッピングカート:ECサイトに欠かせない機能の一つがショッピングカートです。消費者が商品を購入する際、このカートに商品を追加し、購入手続きを行います。売上に直接的に影響する機能であるため、見やすさや使いやすさは特に重要です。また、現在のスマートフォン普及率を考えると、カート機能がスマートフォンに対応していることも必須です。
決済サービス :クレジットカードやQRコード決済など、多様な決済方法に対応することは、現代のECサイトにとって必須です。限られた決済方法では、消費者に不便を感じさせ、機会損失を招く可能性があります。幅広い決済オプションを提供し、ユーザーが選びやすくすることで、購入のハードルを下げましょう。
決済サービスにはセキュリティ対策が不可欠です。特にクレジットカード情報を扱う場合、サイトの脆弱性対策や不正利用対策を講じることで、消費者からの信頼を獲得できます。
当社の親会社であるDGフィナンシャルテクノロジーは、業界大手のペイメントプロバイダーとして、最高レベルのセキュリティソリューションを標準実装した決済サービスを各種提供していますので、決済サービスについてお気軽にお問い合わせください。
ECサイト運営には、受注管理や顧客対応を効率化するシステムも必須です。受注管理システムを導入することで、注文の取りこぼしを防ぎ、業務効率を向上させます。また、メール配信システムを活用して、顧客に対して新商品やキャンペーン情報を効果的に伝えることができます。
他にも、商品ランキング表示やレコメンド機能、レビュー機能などがサイトのパフォーマンス向上に寄与します。これらの機能は、ユーザー体験を向上させ、顧客のエンゲージメントを強化するために役立つため、サイト構築時にぜひ検討してください。先述した機能は必須ですが、ほかにも実装により業務効率の向上、利益拡大に役立つものもあるため、サイト構築の際にはあわせて検討しましょう。
商品の仕入れと在庫管理 :ECビジネスを行う上で、商品の仕入れは基本中の基本です。需要に応じた在庫を確保しておくことで、注文が入った際に即時に対応できます。仕入れに関しては、綿密な計画を立て、欠品が発生しないように管理することが重要です。
サイト制作・更新 :サイトのデザインや機能性は消費者の購買意欲に大きく影響を与えます。ただし、デザインに凝りすぎて使いにくくなるのは避けましょう。ユーザビリティを最優先に考え、使いやすいレイアウトと機能を実装することが重要です。
さらに、サイトの鮮度を保つためには定期的な更新が欠かせません。新商品やキャンペーンの情報をこまめに追加し、ユーザーにとって常に新しい情報が得られる場にしましょう。
プロモーションとマーケティング: 商品を販売するには、効果的なプロモーションが必要です。SNSやWeb広告、SEO対策を活用して、ユーザーにサイトを訪れてもらいましょう。プロモーション戦略を立て、予算内で最大限の効果を発揮する施策を実施することが求められます。
商品発送: 自社で商品の発送を行う場合、梱包も重要な業務の一部です。商品の状態が良好に保たれるよう、適切な梱包を行いましょう。また、スピード感も大切です。即日や翌日発送が可能であれば、顧客満足度が高まり、競争優位を築くことができます。
SI Web Shoppingは1996年にリリースされた、日本初のECサイト構築パッケージです。これまでに1,100以上のサイトに採用されており、その安定性と堅牢性が多くの企業に支持されています。
本サービスの特徴は、柔軟なカスタマイズ性です。企業の成長や変化するビジネスニーズに応じて、多様なソリューションとの連携が容易に可能です。これにより、時代や市場の変化に柔軟に対応し、常に顧客ニーズに合ったECサイト運営を実現することができます。
また、SI Web Shoppingは、独自のブランド戦略を実現したい企業にとっても理想的なプラットフォームです。標準機能に加え、企業独自の要件に応じたカスタマイズが可能で、他社との差別化を図りながら、オリジナリティを打ち出すことができます。
高い信頼性と拡張性を備えたSI Web Shoppingは、ECサイトの安定運用から成長をサポートするための強力なツールです。
ECと通販には大きな違いはなく、ECサイトでの販売は通販の枠に含まれるとの認識で問題ありません。ECサイトの構築には多くのメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットも存在します。そのため、これらをしっかりと理解し、自社のビジネスに最適な選択をすることが重要です。
本記事でご紹介したツールやソリューションは、ECサイトの運営を効果的にサポートするためのものです。事業の成長や競争力の向上を目指す際に、ぜひ導入を検討してみてください。