近年では、ECサイト・実店舗の両方を展開する企業は、オムニチャネル・OMOといったマーケティング手法を実践することが、ビジネスの成長・存続において非常に重要となっています。
特に最新のマーケティング手法を実践した企業とそうではない企業では、売上や成長率に大きな差が見え始めているため、今後も企業が売上を上げ続けるには日々進化を続けるマーケティング手法を次々と取り入れていく必要があるでしょう。
オムニチャネル・OMOに続く次世代のマーケティング手法として注目されているのが、今回ご紹介する「ユニファイドコマース」です。当記事では、ユニファイドコマースの概要・特徴から、現行のマーケティング手法との違い、実際に売上を向上させた成功事例までをご紹介しています。
新しいマーケティング手法についていち早く知見を深めることで、今後のビジネス戦略立案や施策の実行に役立つため、ぜひ参考にしてみて下さい。
ユニファイドコマース(Unified Commerce)とは、直訳すると「統合された商取引」という意味であり、あらゆる顧客情報・顧客データを統合して一人ひとりの顧客にパーソナライズされた顧客体験(商品販売・サービス提供)を提供することを指すマーケティング用語です。
具体的には、「顧客情報」「行動履歴」「購入履歴」「サイト・店舗・アプリ利用状況」「在庫状況」等のさまざまな情報の一元管理を行い、その分析結果を基に顧客一人ひとりに最適なアプローチやサービス提供を行います。
オムニチャネル・OMOのように、「チャネル」「オンライン・オフライン」という概念は既に統合されていることが前提となっており、これらのマーケティング手法を進化させたものと位置付けられています。
ユニファイドコマースが登場した背景には、スマートフォンの普及やアドテクノロジー・アプリ等の進化により、高度で精度の高いマーケティングとサービス提供が可能になったことが挙げられます。
ユニファイドコマースは海外の先進的な企業を中心に導入がはじまっており、いずれはオムニチャネル・OMOのようにビジネスのトレンドとなる次世代のマーケティング戦略・手法として注目を集めています。
その背景には主に以下のような小売業界における変化があります。
ターゲットにリーチするチャネルは、ひと昔前はTVや新聞、雑誌、広告などに限られていましたが、現在はインターネットやスマートフォン、SNSなど多岐にわたります。事業者はこれらの媒体でリーチできるユーザーを取りこぼさないよう、網羅的に施策を打つ必要がありますが、従来のマーケティング手法では限界が出てきます。
そこでオンライン・オフラインを問わず、あらゆるチャネルを経由してくるユーザーそれぞれに最適化された情報やサービス体験を、タイムリーに提供できる有効な仕組みとしてユニファイドコマースが注目されています。
コロナ禍における消費者のデジタルシフトの影響もあり、EC市場は急激に拡大し続けています。そこで今までは実店舗のみを展開してきたメーカーやブランドがEC市場に参入するケースが急増しました。しかし、従来の実店舗向けの施策とECサイトの施策を隔ててしまっては、ユーザーにとって満足度の高い購入体験は提供できません。新規顧客やリピーターを獲得するためにも、実店舗とECサイトを融合した購入体験の提供が重要視されるようになりました。
ユニファイドコマースの最大の特徴である、顧客一人ひとりにパーソナライズされたサービス提供とは、どのようなことを指すのでしょうか。
現在活用されているマーケティング手法においても、顧客情報を活用して顧客の年齢・性別・エリア等の属性にセグメントした施策や、行動履歴や購買履歴といったデータを活用した施策は既に実施されています。
しかし、これらの施策はある程度一括りに分類された顧客に対して行われており、必ずしも目論見通りの成果に繋がるとは限りません。あくまで成果を得やすい方向に寄せていると言ってもいいでしょう。
一方、ユニファイドコマースは、顧客一人ひとりに対してピンポイントで的確な施策を実施する「One to Oneマーケティング」であるため、施策の精度や成功率を圧倒的に高めることが可能です。ユニファイドコマースに匹敵するクオリティの顧客体験は、他の手法での実現は難しいと言えます。
ユニファイドコマースで提供できるハイクオリティな顧客体験は魅力的ですが、その実現には高度なテクノロジーや緻密なノウハウが必要不可欠であり、容易に実現することは難しいでしょう。
ユニファイドコマースは、現在トレンドとなっているマーケティング手法であるオムニチャネルやOMOと共通している部分や類似している部分も多くあります。ユニファイドコマースについての理解を深め、戦略立案や施策の実施を適切に行うためには、他のマーケティング手法との違いを明確に把握しておくことが重要です。
ここでは、OMO・オムニチャネルの概念・特徴から、ユニファイドコマースとこれらの手法の違いについて解説しています。ユニファイドコマースに興味・関心のある方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
OMO(Online Merges with Offline)とは、直訳すると、「オンラインとオフラインを融合する」という意味を持つマーケティング用語です。後述するオムニチャネルと類似していますが、OMOはオムニチャネルを更に進化させたマーケティング戦略・手法と位置付けられています。
オムニチャネルは各チャネルを統合・連携するのに対し、OMOはオンラインとオフラインの境界そのものを無くし、顧客がチャネルを意識せずに消費行動やサービス利用が行えることが特徴です。
OMOが普及しつつある背景には、人々はチャネルの違いやオンライン・オフラインの違いをあまり意識しなくなってきたという、テクノロジーの進化と人々の消費行動の変化が挙げられます。
代表的なOMOの事例としては、自動接客・無人店舗・フードデリバリー・シェアリングサービス等が挙げられます。これらの事例を紐解いていくと、OMOについて具体的にイメージしやすいでしょう。
オンライン・オフラインのチャネルを意識しないシームレスなサービスを提供することで、企業は顧客に対してより上質な顧客体験を提供できることがOMOの最大のメリットです。
ユニファイドコマースとOMOは、商品・サービスを提供する仕組み自体は類似しています。しかし、目指している目的・ゴールに大きな違いが見られます。
OMOでは、顧客の利便性・満足度を高めることで、売上を向上させることが主な目的です。ユニファイドコマースにおいても当然売上は追求するのですが、それ以上に「CX(顧客体験)」を非常に重要視しているところに特徴があります。
ユニファイドコマースでは、高精度のOne to Oneマーケティングにより、顧客にパーソナライズされたきめ細やかなサービスを提供することで、利便性だけでなく満足感・充実感・特別感を提供することを重要視しています。
結果として売上向上やビジネスの成長といったメリットを得ることができますが、あくまで上質な顧客体験を前提としている点がOMOとの最大の違いです。
ユニファイドコマースは次世代のマーケティング戦略・手法と位置付けられていますが、目指している目的が顧客中心主義というビジネス・商売の基本中の基本であることは、非常に興味深く面白い点と言えるのではないでしょうか。
商品やサービスの提供・販売を行うための企業と顧客の接点のことを「チャネル」と言い、近年ではECサイト・実店舗・SNS・カタログ・DM・アプリ・メルマガ・TVCMなどさまざまなチャネルが活用されています。複数のチャネルを活用している企業は今や当たり前のように存在しており、このようなチャネルの活用をマルチチャネルと呼びます。
マルチチャネルが各チャネルを個別に稼働させることを指すのに対し、オムニチャネルとはあらゆるチャネルを統合・連携してチャネル間の境界を無くし、シームレスな購買体験ができることを目指すマーケティング戦略・手法です。
ビジネスをオムニチャネル化することで、顧客は時間や場所にとらわれることなく商品を購入することが可能となり、購買行動の自由度・利便性が飛躍的に高まります。企業側には、顧客満足度の向上・販売機会の増加・客単価アップ・リピート率アップといったビジネスの成長に繋がるさまざまなメリットがあります。
多様化する顧客ニーズに対応する必要性があることやIT技術の進化により、オムニチャネルを提供する環境が整ったことからオムニチャネル化を実践する企業は増え続けており、日本国内においても成功事例が多く見られるようになってきています。
ユニファイドコマースとオムニチャネルは、両者とも各チャネルを統合・連携させる点においては共通しています。ではどのような点に違いがみられるかと言うと、マーケティング手法にあります。
オムニチャネルでは、各チャネルを統合させると同時にさまざまなデータも統合・連携させて、マーケティングや施策に活用します。
ユニファイドコマースでは、更に一歩踏み込んで、画一的な施策ではなく顧客一人ひとりにパーソナライズされたアプローチを行う点が最大の特徴です。
顧客と接点を持つことにより得られた属性・行動履歴・購買履歴等を基に、顧客一人ひとりに最適化された「One to Oneマーケティング」を行うことにより、オムニチャネルよりも更に上質な顧客体験を提供することができます。
オムニチャネルの仕組みをベースにOne to Oneマーケティングを実践するのがユニファイドコマースであり、オムニチャネルをより昇華されたマーケティング戦略・手法と言えるでしょう。
ユニファイドコマースはこれからの小売企業にとって必要不可欠ともいえる重要なマーケティング手法ですが、導入するためには土台づくりをしなければなりません。
まずはオンライン・オフラインをつなぎ、パーソナライズされた体験を提供するためにデータ統合が必要です。
POSや顧客管理、在庫管理などの各種システムに蓄積されるデータを全スタッフがアクセスできるよう、データベースを一元管理します。会員データの連携やポイントの統合、各チャネルでの行動履歴などを蓄積することで、各ユーザーに最適化された顧客体験が実現できるようになります。
ユニファイドコマースは登場して間もない新しいマーケティング手法ですが、いち早く施策を実施して売上を大きく伸ばした成功事例が既に登場しています。
競合他社に先駆けて新しいビジネスをスピーディーに展開すると、競争優位性を発揮して先行者利益を得ることができるケースも多くあります。そのため、業界の動向・トレンド・成功事例には常にアンテナを張って情報感度を高めておくことが重要です。
ここでは、ユニファイドコマースの成功事例について2選ご紹介します。ユニファイドコマースに興味・関心がある方は、今後のビジネス戦略・施策を検討する際の参考にしてみて下さい。
TSIホールディングスは、50以上の人気ブランドを展開する大手アパレル企業です。ECサイトと実店舗の一元化により、オンライン・オフラインの区別なく商品を購入できる施策や、在庫取り寄せ等の施策を実施して、大きな売上拡大に繋げています。
ユニファイドコマースの施策は始めたばかりですが、2021年3月にはオンライン試着予約サービスをリリース。実店舗にて試着を行った顧客の購入率は8割を超えるなど高い成果へと繋げています。
また、アプリによるポイント付与機能やおすすめ商品レコメンド機能の提供、ECサイトの顧客と店舗スタッフを対話アプリで繋いで接客するサービスの提供もスタートしており、業界のリーディングカンパニーとしてユニファイドコマースを積極的に推進しています。
TSIホールディングスのユニファイドコマースは、オムニチャネルの延長上としての施策が多いことが特徴です。実際に成果をあげており、再現性も期待できる施策が多いため、参考になる部分は多いのではないでしょうか。
参考:パンデミックでも店舗を“休眠させない” ユニファイドコマースは、小売りの救世主になるか
ベイクルーズは輸入衣料品やオリジナル衣料品・雑貨等を販売する企業です。ECサイトに加え数多くの実店舗を抱える同社は、2013年よりオムニチャネル化に取り組み売上を伸ばしており、近年ではユニファイドコマースもいち早く実践して大幅な売上増加を記録しました。
ベイクルーズのユニファイドコマースは、従来のオムニチャネルをベースとしたシームレスなサービス提供体制を構築するだけでなく、世界トップクラスとも言える先進的なテクノロジーを採用していることが特徴です。
ビジュアルAIによるアパレルの画像検索機能の活用をはじめとした施策により、非常に高いCX(顧客体験)を提供。一般的な数値を圧倒的に上回る成約率を叩き出すといった実績をあげています。
現在においても、より積極的で幅広いAI活用を推進するなど、ユニファイドコマースにおけるCX向上のための施策を実施し続けています。
テクノロジーを効果的に活用した先進的なユニファイドコマースを実践している企業であるため、今後ユニファイドコマースの実践を検討している企業にとっては非常に参考になる事例と言えます。
参考:世界最先端のユニファイドコマース実現へ :ベイクルーズが実践する成長のためのAIテクノロジー活用
そのほか、以下のユニファイドコマース取り組み事例も参考になるのではないでしょうか。
・小売りの新トレンド「ユニファイドコマース」とは CX高める施策
英国百貨店「ジョン・ルイス」が取り組むユニファイドコマース事例が紹介されています。
現在、人々が商品・サービスを購入する流れは、テクノロジーの進化や提供手法の多様化・高度化により大きな変化が見られます。今後も消費動向の変化は加速を続けるでしょう。このような状況下において企業が売上を確保するためには、多様化・変化を続ける人々のニーズに応えられる戦略・施策を実施することが非常に重要です。
当記事でご紹介したユニファイドコマース・OMO・オムニチャネルは、顧客ニーズを満たしロイヤリティを向上できる、まさに時流に合った効果的なマーケティング戦略・施策であると言えるでしょう。特に、次世代のマーケティング戦略・手法として注目されているユニファイドコマースは、世に登場して間もないため、いち早く取り組むことで高い成果が期待できます。
ユニファイドコマースやOMOを実現するベースとなるオムニチャネル化については、弊社でも詳細な資料をご用意してありますので、ご興味のある方はぜひダウンロードしてご活用下さい。
公開日:2023年8月31日 最終更新日:2024年8月20日