ECビジネスを始める際に多くの企業が直面する課題が、「モール型ECサイトに出店するか、自社ECサイトを構築するか」という選択です。楽天やAmazonといったモール型ECサイトに出店すれば、すぐに多くのユーザーに商品を届けられるという大きな利点があります。
しかし、モール型にはデメリットも存在します。自社に最適な形でECビジネスを展開するためには、モール型ECサイトと自社ECサイトの違いや、それぞれのメリット・デメリットを正しく理解することが重要です。
この記事では、モール型ECサイトと自社ECサイトの違い、メリット・デメリット、モールごとのユーザー数などについて詳しく解説します。モールへの出店を検討する際の参考にしてください。
また、ECサイト構築についての詳細は以下の記事でも紹介しています。
ECサイト構築を徹底解説 | 費用相場・方法・制作手順から会社の選び方まで
※SI Web Shoppingは、モール型ECサイトと自社ECサイトの両方を構築可能なパッケージです。
モール型ECサイトとは、複数の店舗が集まるインターネット上の仮想ショッピングモールのことです。楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピングなどがその代表例です。
モール型ECサイトには主に以下の3つの種類があります:
自社ECサイトは、ドメイン取得やサイト構築、運営をすべて自社で行うECサイトのことです。モール型ECサイトに比べると初期費用は高くなりますが、毎月の利用料やロイヤリティが発生しないため、長期的には収益性が高いというメリットがあります。また、自社ECではシステムや利用規約に縛られないため、自由なサイト運営が可能です。
さらに、自社ECの構築・運営を支援するパッケージやASPサービスも充実しており、企業だけでなく個人でも簡単に自社ECを立ち上げられる環境が整っています。
モール型ECサイトには、「マーケットプレイス型」、「テナント型」、そして「統合管理型」の3つのタイプがあります。
マーケットプレイス型は、出店ではなく「出品」を行うタイプのモール型ECサイトです。Amazonがその代表例で、企業は商品データをAmazonに提供し、データ管理はAmazonが行います。商品が購入されると、その情報が企業に伝達され、発送業務を行うという仕組みです。
メリットは、ECサイト運用の負担が軽減され、初期投資が少なく済む点です。ただし、デメリットとして、ユーザーには出品企業の存在感が薄く、価格や商品力が売上に大きく影響します。また、他社商品が自社商品の購入ページに表示されることがあり、競争が激化する可能性があります。
テナント型は、実店舗のショッピングモールに似た形式で、企業が独自に店舗を運営するタイプです。楽天市場やYahoo!ショッピングが代表例です。
この型では、店舗の特徴やブランド力を活かしたマーケティングが可能で、リピート購入の向上も期待できますが、商品登録、受注管理、売上集計等などの運営作業をすべて企業独自に行うので、企業側の運用負担が高くなります。
統合管理型は、自社の複数ブランドを一つのECモール内で運営する形式です。
ブランドごとにECサイトが分かれていると、独立している分自由度が高くブランドイメージを際立たせることができるというメリットがある一方、運営コストが高くなる、顧客に横断して買い物をしてもらいづらいなどのデメリットがありました。
統合管理型では、1つのプラットフォーム上で複数のブランドを管理するため、運営の効率化が図れます。モール全体のTOPページとブランドごとに異なるトップページを設けることで、統一感を持ちながら個別の特徴を表現することも可能です。
ただし、自社独自にECモールを開発し運営するという形になるため、高額な費用がかかり、複数のECサイトを統合する際にはシステムや運用の統一が必要なため、プロジェクトの難易度が高いという課題があります。
モール型ECサイトに出店する最大のメリットは、モールが持つ集客力や、出店者向けのサポートサービスを活用できる点です。ここでは、代表的なメリットについて解説します。
モール型ECサイトは、膨大なユーザーを抱えており、出店者はモールの集客力を利用してビジネスを始められます。特に自社ECサイトを立ち上げる場合、集客には大きな労力が必要ですが、モール型ではすでに集客基盤が整っているため、EC初心者や集客が苦手な企業にとっては非常に有利です。
モール型ECでは、テンプレートや出店システムが整備されており、専門知識がなくても簡単に出店できます。加えて、アクセス解析や販促ツール、受発注管理のシステムが提供されるため、迅速かつ効率的に運営をスタートできます。
モール型ECサイトでは、実店舗を持つ必要がなく、コストや手間を大幅に削減できます。実店舗の出店に比べ、モール型ECでは初期投資が抑えられ、オンライン上で簡単にビジネスを開始できるため、個人や中小企業でも挑戦しやすいビジネスモデルです。
モール型ECは、出店者向けに豊富なサポートを提供しています。サイト構築や運営のノウハウ、販売促進のアドバイスを得られるほか、サポートデスクやECコンサルタントとの相談も可能です。これにより、特にEC初心者はスムーズな運営が期待できます。
モール型ECサイトは多くのメリットを提供する一方で、モールのルールや制約がデメリットになることもあります。ここでは、代表的なデメリットについて説明します。
モール型ECに出店する際に注意すべき点の一つが、ランニングコストです。月額利用料、ポイント付与やメルマガ発行などのオプション費用、売上に応じたロイヤリティなど、さまざまな費用がかかります。
特に売上が上がると、それに伴い課金されるロイヤリティ等の費用が増えるため、売上が好調でも利益が伸びにくいケースもあります。自社ECサイトと比較すると、収益性が低くなりやすいのが大きなデメリットです。
モール型ECでは、ユーザーが複数の店舗や商品を簡単に比較できるため、価格競争が激化します。特に人気ジャンルでは、価格を下げないと売れにくく、結果として利益が削られるリスクがあります。
モール型ECに出店する場合、戦略的な価格設定が必要ですが、利益確保が難しい点には注意が必要です。
モール型ECサイトでは、モールが提供するテンプレートやシステムを使用するため、他店舗と似たようなデザインやレイアウトになりがちです。自社ECサイトのように独自性を出すことが難しいため、他の店舗との差別化がしづらいというデメリットがあります。
これにより、独自のブランドイメージやオリジナルの顧客体験を提供することが難しくなることがあるため、特に成長を目指す企業にとっては制約が大きいと感じるかもしれません。
モール型ECでは、顧客情報がモール側で管理されるため、出店者が顧客の詳細情報にアクセスすることはできません。顧客リストが手に入らないため、自社のマーケティング活動に活用できないのが大きなデメリットです。
長期的に見ると、顧客データを活用できないことが、マーケティングや顧客関係構築において制約となり、自社ECサイトに比べて自由度が低くなります。
モール型ECサイトに出店する際には、各モールの特徴を理解することが重要です。それぞれのモールには異なる強みや集客方法、出店条件がありますので、自社のビジネスモデルに最も合ったモールを選択しましょう。ここでは、主要なECモールの特徴を紹介します。
楽天市場は日本最大級のテナント型ECモールで幅広いユーザー層に支持されています。2024年時点で、楽天市場の出店店舗数は約5.6万店舗、国内の楽天会員数は約1億人に達しています。楽天ポイントの還元率の高さや、季節ごとの大規模なセールイベントが強みです。また、楽天グループの多岐にわたるサービスとの連携も可能で、ユーザーの購買体験を向上させることができます。ただし、出店コストは他のモールと比べて高めであるため、長期的な収益計画が重要です。
ヤフー株式会社が運営するテナント型のECモールです。出店料が無料であることから、特に新規ビジネスに最適なモールとして、店舗数が国内最大の約120万店舗ともいわれています。Yahoo!ショッピングは、PayPayとの連携により、キャッシュレス決済の利用者が多く、特に若年層の集客力が高いのが特徴です。SEOや広告分野に強いYahoo!ブランドを活かし、アクセスを増やす施策が豊富に提供されています。ただし、競争が激しく、価格戦略が重要となります。
Amazonは、世界中で利用されているマーケットプレイス型ECモールです。特に「FBA(フルフィルメント by Amazon)」を活用することで、在庫管理や発送業務をAmazonに委託できる点が強みです。日本では月間ユニーク訪問者数が1,326万人(デスクトップ)、4,306万人(モバイル)に達しており、非常に多くのユーザーが日常的に利用しています。これにより、広範なユーザー層にリーチできる一方、独自のブランド構築やデザインのカスタマイズは難しいため、商品力や価格競争がカギとなります。
出典:「Amazon出品サービス初心者ガイド」
ここまではBtoCのモール型ECサイトについて紹介しましたが、BtoBの取引にもモール型ECサイトが存在します。BtoB-ECとは、企業間取引(BtoB)をECプラットフォーム上で行うことを指します。
代表的なBtoBのモール型ECサイトには、以下のものがあります。
モール型BtoB-ECサイトは、テナント型が多いBtoCとは異なり、マーケットプレイス型が主流です。そのため、モール型BtoB-ECは「BtoBマーケットプレイス」と呼ばれることもあります。
BtoB-ECにおいても、BtoC-ECと同様に、モール型と自社ECにはそれぞれ異なるメリットとデメリットがあります。どちらを選択するかは、企業のビジネスモデルや目的によって決まります。ここでは、BtoBビジネスをEC化する際のモール型ECと自社ECのメリット・デメリットを確認しましょう。
モール型BtoB-ECも、BtoCのECと同じようなメリット・デメリットを持ちます。
自社ECのメリット・デメリットについてもBtoBとBtoCで類似していますが、影響範囲や影響の大きさが大幅に異なる点に留意しておく必要があります。
ではBtoBビジネスのEC化を検討している企業は、モール型ECと自社ECのどちらを選べば良いのでしょうか。上記でご紹介したメリット・デメリットを踏まえてご紹介します。
モール型ECが適している典型的な例は、初期費用を抑えてスムーズにBtoB-ECをスタートしたい場合です。
モールが持つ集客力や、確立されたシステム・サポートを利用することで、短期間でBtoB-ECを軌道に乗せることができるでしょう。
自社BtoB-ECが適しているのは、コスト・時間・労力を投下してでも自社の思惑通りのBtoB-ECを展開したい場合です。全て自社で行うため負担は大きくなりますが、自由度の高いECサイト構築・運営を行うことができます。
ある程度認知されている企業の場合は、比較的スムーズに自社BtoB-ECを展開することができます。
自社の認知度・資金力・リソース等によってはモール型に選択肢を絞らざるを得ないケースもありますが、自社の目的・ニーズに合わせて出店形態を選定することが重要なポイントです。
回はモール型ECサイトについてご紹介してきましたが、ECサイトを展開する企業は、特定のECモールへの出店や自社サイト出店などを単独で展開するのではなく、自社の状況や戦略に応じて併用することが一般的となっています。
このように複数のECサイトを同時展開する場合には、在庫情報・受発注情報など運営に必要な情報を一元化できているかが、業務効率化の実現や、売上・利益を最大化するためのポイントとなります。
当社が提供するECパッケージ「SI Web Shopping」であれば、各ECサイト・実店舗の在庫や顧客情報を一元管理することができます。また、優先(出荷・手配)在庫引当機能による処理自動化、出荷/手配/加工等の作業進捗管理による最適な人員配置、各モール連携(商品,在庫,受注)など、情報だけでなく業務方式・業務フローの一元化を実現することも可能です。
今後ECビジネスを成長・拡大させるためには、このように情報・業務を一元化できるECサイト構築パッケージを選定することが鍵となります。弊社では、ECサイト構築・リプレイスに役立つ資料も提供しているため、ECサイトの立ち上げや見直しを検討している方は、是非ご活用ください。
公開日:2022年10月21日 最終更新日:2024年10月14日