ブログ | ECサイト構築パッケージSI Web Shopping

CDPとは?ECサイトで顧客体験を強化するデータ活用法

作成者: 株式会社DGコマース|2024.10.28

近年の急速なデジタル化により、EC業界はデータ活用の重要性がこれまで以上に高まっています。顧客データの活用が、単なるトレンドではなく、競争優位を築くための不可欠な要素となってきました。

しかし、断片化されたデータや複数のチャネルにまたがる顧客情報を効果的に管理することは、多くの企業にとって大きな課題となっています。そこで注目されているのが、カスタマーデータプラットフォーム(CDP)です。CDPは、ECサイトにおける顧客データの一元管理を可能にし、リアルタイムでの分析やパーソナライズされたマーケティング施策を支える重要なツールです。

本記事では、CDPがどのようにECサイトの顧客体験やマーケティング施策の強化に寄与するのか、その基本的な役割と導入メリットについて解説していきます。

CDP(カスタマーデータプラットフォーム)とは?

CDPは、企業内のさまざまなチャネルやデータソースから顧客データを集約し、統一された顧客データを構築するためのプラットフォームです。

ECサイト運営者にとって、顧客データの分散管理は大きな課題です。たとえば、顧客の行動データがECサイトと店舗のPOSシステムに分かれている場合、顧客がどのようにして商品を見つけ、どのチャネルで購入したのかを全体像として把握するのが難しくなります。

さらに、オンライン広告キャンペーンのデータが広告プラットフォーム内にのみ保存され、メールマーケティングや購入履歴データとは連携されていない状況も少なくありません。

このようにデータがばらばらに存在する状態では、顧客の全体像が見えにくく、次のような支障・課題が生じます。

  • 一貫性のない顧客体験

オンラインでカートに入れた商品が店舗システムと連携していない場合、来店時に顧客の購買意欲やニーズに応じたサポートができず、購買機会を逃すこともあります。こうした体験のばらつきは、顧客の満足度低下やロイヤリティの低下につながります。

  • データ分析の精度低下

データが分散していると、正確な顧客行動の分析が難しくなり、マーケティング施策や商品開発の方向性を見誤る可能性が高まります。

  • リソースの無駄遣い

複数のデータを都度手作業で統合するためのリソースが必要になり、リアルタイムでの意思決定が困難になることから、マーケティング施策やカスタマーサービスの迅速な対応が難しくなることもあります。

CDPは、こうしたデータの断片化や分散管理の問題を解決するためのソリューションです。顧客の行動履歴、購入データ、デモグラフィック情報、マーケティングデータなどを一元化し、企業全体で活用できる状態にすることで、顧客理解とパーソナライズされた体験の提供を支援します。

CDPの基本機能

CDPの基本機能には、大きく以下のようなものがあります。

1. データの収集と一元管理

CDPは、分散している複数のチャネルから顧客データを収集し、一元的に管理することができます。ECサイト、店舗、SNS、メールキャンペーン、広告プラットフォームなど、さまざまな接点で発生するデータを一箇所に集約することで、顧客の全体像を把握しやすくなります。

たとえば、顧客がWebサイトで閲覧した商品情報、アプリでの購入履歴、店舗での購買行動、過去の問い合わせ内容などがCDPに統合され、個別のプロファイルとして保存されます。

また、CDPはデータの形式や構造に依存せず、構造化データや非構造化データ、リアルタイムデータなども効率よく集約できるのが特徴です。これにより、マーケティングや販売活動の基盤となる正確なデータが整備され、後の分析や施策にもスムーズに活用できます。

2.データ分析と活用

CDPには「リアルタイムCDP」と呼ばれる、リアルタイムでのデータ収集・更新が可能なものがあります。リアルタイムCDPは、顧客の行動データや購買履歴などを即座に収集し、ほぼ瞬時にデータベースに反映します。顧客がサイト上で商品を閲覧している瞬間に、その行動に応じて最適化された施策を実行できるのが大きな特徴です。

たとえば、ある顧客がECサイトで商品を閲覧している際に、過去の購入履歴や好みに基づいて関連する商品をおすすめしたり、閲覧中の商品についてリアルタイムで割引クーポンを提示したりすることが可能です。

また、パーソナライズされたメールやリターゲティング広告も、最新の顧客データに基づいて最適なタイミングで配信されます。こうしたリアルタイムでの分析とターゲティングが、マーケティング施策の精度向上や顧客体験の向上に直結します。

一方で、すべてのCDPが完全なリアルタイム性を持つわけではありません。リアルタイムCDP以外のCDPは、数分から数十分の遅延でデータを更新する「近リアルタイム」や、数時間ごとや日次でのバッチ処理を行うものもあります。

リアルタイム性が必要な施策にはリアルタイムCDPが適していますが、長期間のデータ分析やセグメンテーションが中心の場合は、バッチ処理対応のCDPでも十分に活用できる場合があります。


【CDPイメージ図】※DGコマースが提供する「Commerce Data Insight」の場合

CDPとCRM・DMPの違い

CDPは類似のデータ管理ツールであるCRM(顧客関係管理システム)やDMP(データ管理プラットフォーム)は顧客データを取り扱う点で共通していますが、その役割や機能は異なり、用途や目的に応じて適切に使い分ける必要があります。

  • CRM(顧客関係管理)

CRMは、営業やカスタマーサポートが顧客とのやり取りを記録し、関係性を深めるために使用されるツールです。

主な機能として、顧客の連絡先情報、商談履歴、問い合わせ内容などを一元管理し、営業プロセスの可視化や効率化を図ります。たとえば、特定の顧客にいつ連絡したのか、次のフォローアップのタイミングはいつか、過去に購入した商品やサービスなどを把握することで、顧客に対するより良い対応が可能となります。

しかし、CRMは主に営業やサポート業務に特化しており、マーケティング施策における深いデータ分析やリアルタイムな顧客の行動データには対応していません

つまり、マーケティングキャンペーンの結果や、顧客がウェブサイトでどのように行動しているかをリアルタイムで把握し、即座に個別化した対応を行うことは、CRM単体では難しいのが現状です。

  • DMP(データ管理プラットフォーム)

DMPは、主に広告やリターゲティングに利用される匿名データを管理するプラットフォームです。ウェブサイトのCookieやデバイスID、IPアドレスなど、匿名で収集されたデータを活用し、ターゲティング広告を最適化するのが主な役割です。

DMPのデータは短期間保存されることが多く、特に広告キャンペーンのパフォーマンス向上を目的として使用されます。たとえば、あるユーザーが特定の商品ページを訪れた際、その行動データを記録し、以降の広告配信に反映させるといった使い方が典型的です。

近年は広告に限らず、セグメント化されたデータを他のマーケティング施策にも活用するケースが増えてきています。ただし、DMPが扱うデータは基本的に匿名のものであるため、個別の顧客に対してパーソナライズされた対応を行うには限界があります

また、データの保存期間が短いため、長期間にわたる顧客の行動や傾向を追跡するのにも適していません。したがって、個々の顧客との長期的な関係を築くためには、DMP単独では不十分な場合が多く、CDPとの併用が効果的とされています。

このように、CRMとDMPにはそれぞれの役割や利点がありますが、個々の顧客データを包括的に管理し、リアルタイムでの対応を必要とするマーケティング施策においては、CDPがそれらを補完し、より効果的な施策を実現するためのツールとして重要な役割を果たします。

なぜECにCDPが重要なのか?

デジタル化が進む中、顧客行動は多様化し、ECサイト、店舗、SNS、アプリ、メールなど、複数のチャネルをまたいで商品を探したり、購入したりするケースが増えています。

このマルチチャネルの時代において、顧客の行動や興味を把握し、どのチャネルでも一貫した体験を提供することが競争力につながります。CDPは、各チャネルに分散するデータを一元的に統合し、リアルタイムでのデータ活用を可能にすることで、EC事業における最適な顧客対応や施策実行を支援します。

具体的には、以下のような場面でCDPが活躍します。

  • 購買行動の把握と施策の最適化

たとえば、ECサイトで商品を閲覧し、SNS広告でリマインドされ、実際の購入はアプリで行われるというように、顧客が複数のチャネルをまたいで行動するケースが増えています。

CDPを活用すれば、これらの行動データを一元化し、顧客がどのチャネルでどのようなアクションをとっているかをリアルタイムで把握できます。この情報をもとに、顧客に合わせたメッセージ配信やキャンペーン施策をタイムリーに行うことが可能です。

  • リアルタイムでのリターゲティング

顧客がECサイトで商品を閲覧した後、購入に至らなかった場合、その顧客に対してリアルタイムでリターゲティング広告を出すことができます。CDPがあれば、顧客の行動データを即座に反映できるため、顧客が他のサイトやSNSに移動したタイミングでパーソナライズされた広告を配信し、購買意欲を喚起することが可能です。

  • 在庫管理と即時対応

CDPは顧客データの統合だけでなく、商品の在庫データや販売実績データとも連携させることができます。これにより、ある商品が在庫切れになりそうなときには販売促進を抑えたり、在庫が多く残っている商品を優先的にレコメンドしたりと、迅速な対応が可能です。

たとえば、キャンペーン中に特定の商品が急激に売れて在庫が少なくなってきた場合、その情報がリアルタイムでCDPに反映され、他の購入候補商品のレコメンドへ即時に切り替えるといった対応も可能です。

  • データドリブンな意思決定の迅速化

顧客データが一元化され、リアルタイムで利用できる環境が整うことで、マーケティング担当者や経営者は迅速にデータに基づいた意思決定ができます。たとえば、直近のキャンペーンのパフォーマンスを即時に分析し、必要に応じて施策を修正したり、次のキャンペーンの計画に反映したりすることが可能になります。

CDPによる顧客体験の向上とパーソナライズ活用法

CDPを活用することで、EC事業者は顧客の行動や興味に基づいた個別対応が可能になり、顧客体験を向上させられます。以下に、CDPを活用した具体的なパーソナライズ施策とその効果を紹介します。

  • リアルタイム通知による即時対応

顧客の関心をもとにしたリアルタイム通知を行い、購入機会を促進します。たとえば、セール開始時に商品ページを訪れていた顧客にセール通知を送るなど、タイムリーなコミュニケーションが可能です。

  • リターゲティング

顧客がECサイトで商品を閲覧したものの購入に至らなかった場合、その行動データを基にリターゲティング広告やメールを送ることができます。たとえば、ECサイトで閲覧した商品が割引になった際、メールやアプリ通知で知らせることで、購買意欲を喚起し、再訪問や購入の促進が可能です。

  • 商品レコメンド

購入した商品のカテゴリや顧客の過去の購入履歴に基づき、関連する商品を提案します。たとえば、カメラを購入した顧客に対しては、専用ケースやレンズクリーナー、三脚などの関連商品をレコメンドし、クロスセル・アップセルを図り購入単価を上げることができます。

  • パーソナライズメール

顧客のライフサイクルに応じたリマインダーメールやオファーを送ることで、再訪問や購入を促進します。たとえば、誕生日の割引クーポンや購入後のフォローアップメールにより、顧客とのエンゲージメントを維持します。

  • ロケーションベースのパーソナライズ

実店舗とオンラインを組み合わせたO2O施策として、顧客が近隣の店舗にいる際に特別セールや限定オファーを通知することが可能です。これにより、オンラインで関心を持っていた商品を実際に店舗で確認して購入する体験を提供できます。

  • 購入後フォローアップ

購入後の顧客体験を向上させるために、購入商品の使い方や関連商品についてフォローアップメールを送ることができます。たとえば、家具を購入した顧客には、インテリアのコーディネート例やメンテナンス方法などの情報を提供することで、顧客満足度を高められます。

  • ロイヤルティプログラムに基づく特典提供

ロイヤルティプログラムに参加している顧客に対して、ポイントの残高や特典の更新情報をリアルタイムで通知します。さらに、ポイント有効期限が近づいている場合にリマインダーを送ることで、ポイント利用の購買促進やリピート率の向上が期待できます。

  • 休眠顧客の再活性化キャンペーン

一定期間サイトやアプリを利用していない顧客に対し、個別のオファーを送ることで再訪問を促します。たとえば、長期間購入がない顧客に対して限定クーポンを送付し、再度の関心を引く施策が可能です。

  • マルチチャネルでの一貫した顧客対応

顧客がチャネルをまたいでシームレスにやり取りできるように、すべてのチャネルで一貫した顧客情報を表示します。たとえば、サイトでカートに入れた商品が実店舗の在庫に連動して表示され、店舗での受け取りも選択できるようにすることで、利便性の高い顧客体験を提供します。

CDPを活用することで、EC事業者は顧客の行動データに基づいた多角的なパーソナライズ施策を展開でき、顧客体験の質を向上させながら購買率や顧客満足度の向上を目指すことができます。

CDPによるマーケティング戦略の精度向上と業務の効率化

CDPを活用することで、ターゲティングやキャンペーン実施の精度を高め、業務の効率化が図れます。CDPが提供する分析データを基に、効果的なマーケティング戦略をスピーディに立案・実行できるため、リソースの最適活用が可能になります。

このような効率化により、マーケティング施策の成果が一層明確になり、ROI向上にもつながります。

  • セグメント分析による精度向上とターゲティングの最適化

CDPが提供する詳細な顧客データ分析を基に、顧客を複数の視点でセグメント化することで、より精度の高いターゲティングが可能になります。これにより、効果の見込まれる層にリソースを集中させられ、費用対効果を向上させるマーケティング戦略が実現します。

  • 効率的なリターゲティング施策

リターゲティング施策の自動化により、再購入を促進することが容易になります。たとえば、CDPを通じて過去の閲覧履歴や購入傾向に基づく再アプローチが可能となり、顧客が購入を検討している段階で最適なタイミングでリマインドが送れるため、効果的な再購入促進が期待できます。

  • マーケティングの自動化でリソースの効率化

CDPは、事前に設定した条件に基づき、メール配信や広告展開などのマーケティング施策を自動化します。これにより、担当者が毎回施策を手動で設定する手間が省け、リソースを効率的に活用しながら、継続的に顧客体験の質を維持することが可能です。

また、自動化された施策により、リアルタイムでの調整も容易になるため、戦略的な柔軟性も向上します。

CDP導入時の成功のカギと注意点

CDPを効果的に導入し活用するためには、いくつかの重要な要素と注意点を押さえておくことが必要です。以下のポイントを確認し、導入の成功に向けた準備を整えましょう。

1. ビジネスゴールの明確化

CDP導入の前に、ビジネスゴールとマーケティングの課題を明確にしましょう。CDPは単なるデータ管理ツールではなく、マーケティング効果の向上や顧客体験の最適化に直結します。例えば、購入頻度の向上や顧客ロイヤリティの強化など、具体的な成果をイメージして導入準備を進めることが重要です。

2. データの一貫性と品質の確保

CDPはさまざまなデータソースから情報を統合するため、データの一貫性と品質の確保が重要です。正確で最新のデータを用いることで、より信頼性の高い顧客セグメントやパーソナライズ施策が実現できます。データがばらばらに蓄積されている場合は、事前にクレンジング(重複削除やフォーマット統一)を行うとよいでしょう。

3. プライバシーとコンプライアンスの遵守

CDPを導入する際、顧客データの取り扱いに対してはプライバシーやコンプライアンス(GDPR、CCPA等)を遵守することが重要です。収集・活用するデータが法的基準を満たしていることを確認し、ユーザーが自身のデータをコントロールできる仕組みを整えることが求められます。

4. クロスファンクショナルなチーム体制の構築

CDPはマーケティングだけでなく、営業、カスタマーサポート、IT部門など、複数の部署でデータを共有・活用できるシステムです。部署横断的な体制を築き、協力して運用・活用方法を検討することで、全社的なデータ活用の最適化が図れます。

5. スモールスタートで始める

CDP導入の成功には、スモールスタートから段階的に進めることが有効です。最初に一部の顧客セグメントや単一のチャネルでの施策を試験的に実施し、成果を確認しながら範囲を拡大していくことで、リスクを抑えた導入が可能になります。

まとめ

デジタル化が進む現代において、EC事業者が顧客のニーズに応え、満足度を高めるためには、データを活用した戦略が不可欠です。CDP(カスタマーデータプラットフォーム)は、分散したデータを一元化し、リアルタイムに顧客理解を深め、パーソナライズされた体験を提供するための基盤となります。

また、CDPの活用により、マーケティング施策の精度が向上し、リソースを効率的に使いながら成果を最大化することが可能です。導入にあたっては、ビジネスゴールの明確化やプライバシー保護の確保、クロスファンクショナルなチーム体制の構築など、重要なポイントを押さえた準備が求められます。

DGコマースが提供する「Commerce Data Insight」は、EC事業者向けのデータマネジメントプラットフォームとして、CDPとDMPの機能を兼ね備え、顧客データの統合やリアルタイムのデータ活用、広告最適化まで幅広く対応できる総合的なソリューションです。分散するデータの一元管理により、データドリブンな意思決定を迅速に行い、EC事業の成長を支援します。ご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

>お問い合わせ