EDLPとは、「Every Day,Low Price(エブリデーロープライス)」の略で、セールなどで一定期間特売をするのではなく、毎日低価格で提供するという価格戦略です。特定の商品だけを際立って安い価格で販売する特売セールを行わないかわりに、年間通して、どの商品も満遍なく低価格で販売する手法で、一過性でない売れ方となるため予測や計画がしやすいというメリットがあります。
EDLPは毎日低価格なため、予測や計画が立てやすいというメリットの他に、セール告知などの広告費を削減できるということがあります。また、特売セールを行うと、対象商品に関しては原価ぎりぎりでの提供になりますから、その分の利益減少は他の商品を売ることで埋め合わせなければなりません。ところが、顧客の中には特売品だけを購入する人がおり、埋め合わせはなかなか難しいのです。
利益を上げようとすれば特売品以外の商品の価格をある程度上げなければならず、結果として、多くの顧客にとっては不都合の方が大きくなります。顧客離れが起きる可能性もあり、そうなると、企業の損失にもつながっていきます。EDLPを実施することで、こうした損失を防げると考えられます。
またセール目当ての顧客はセールが終了してしまうと離れていってしまうのに対し、EDLP戦略の場合固定客化しやすいという特徴もあります。
EDLPの反対にHigh&Lowという戦略があります。これが先程から例としてご紹介しているセールによる値引きを行う価格戦略です。
High&Low戦略にはセールによる多くの顧客を誘導できるというメリットがあります。ここまでご説明したとおり、広告経費が発生し、またセールが終わると売上が下がるというデメリットもあるのですが、顧客を引き込む力のある目玉商品を効果的に作ることで大きな成果を出すこともできます。
また一定期間内で売上を伸ばさないとならないといった場合もHigh&Low戦略は有効です。
期間限定の値引きによる集客が期待できないため、よくも悪くも売上は徐々に伸びていく形になります。また、EDLPを実現するには徹底したローコスト経営ができることが条件となります。一過性ではない低価格を実現するには低コストで運営できる必要があるからです。
EDLPは一見理想的な戦略にも見えるのですが、ローコスト経営ができる体制がない状態で採用してしまうと、単に売上と粗利が下がってしまうだけで終わってしまう可能性があります。
High&Lowが単純で成功しやすいモデルというわけではありませんが、EDLPの方がコストカットや仕入れの交渉力など経営として求められるものが多いモデルと言えます。
ここまでご紹介したとおり、EDLPは固定客を増やし、安定的な売上を実現することが期待できる戦略です。ここからはその実現に際して重要なポイントについてご紹介していきます。
自社ブランドの商品は、他の仕入れ商品と比較し原価を抑えることができます。ブランディング、マーケティングにコストをかけているNB(ナショナルブランド)商品と比べると、消費者からすると知らない商品、魅力的に見えない商品と思われがちですが、EDLPの顧客層はコスパを重視する傾向が強いので、値段に対してしっかりした品質のPB商品を提供することで、顧客満足度と粗利を両立することが期待できます。
EDLPで粗利を確保するにはコストの削減が必要です。商品の仕入れ価格を抑えることも重要ですが、限界があります。社内で削減可能なオペレーションコストにも手を付ける必要があります。
店舗のオペレーションには品出しやレジなど様々な業務があります。これを少人数で効率的に実現するには設備への投資が必要となってきます。例えば無人レジやキャッシュレス決済の導入などがありますが、これだけではまだ限定的です。
品出しを効率化するための棚づくりやデジタル値札の導入など、効率化できる業務は徹底的に見直す必要があります。
オペレーションコストの削減にもつながるのですが、たくさんの種類の商品を品出ししたり、値札を変更したりする作業はEDLPの戦略においては適していません。
顧客の多くはいつもの定番商品を低価格で購入するために来店するので、よく売れる商品に絞って商品を構成していく方が適しています。
また商品を絞ることで、仕入先との仕入れ価格の交渉も有利に進めることができます。EDLPは安定した売上を見込むことができるので、1種類の商品を多く、長期間に渡って仕入れるという交渉をすることができます。